エリアラ-2
□【星の瞬く聖なる夜へ】
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12月21日
「ねぇ、エリック?」
一頻り残業に目処がついた頃、隣で黙々と報告書を作成していたアランが此方に目線を向けた。
「おう、なんだアラン?」
人間界が近年稀にみる大寒波に襲われていた今週、神とはいっても死神では到底太刀打ち出来ない自然災害に此処、死神派遣協会も慌ただしい日々となっていた。
人間は不慮の事故だと、自分が死んだことに気付かなかったり、死を認めたくなくて回収の際に抵抗することが多々あるが、今日は特にそんな対象者が多かったからか、俺としたことが何時もより時間が掛かっちまったんだ。
凍てつく寒さに冷えきった身体がようやく解れてきた、そんな時だった。
「エリック 、今日…さ、少し寄り道してもいいかな?」
申し訳なさそうな顔でアランが問うた。
寒いのが苦手な俺は真っ直ぐ家路に着きたかったんだが、それでも可愛い恋人のおねだりとあっちゃ断れない。
ま、寒かったら形振り構わずアランに抱き付いときゃいい訳だしな。
「いいぜ、付き合ってやるよ。」
そんな下心はひた隠しに、全ての報告書を提出して協会を出ると既に時刻は午後8時を回っていた。
何時もなら通勤の人で溢れ帰っているストリートも、この時間となれば足並みは疎ら。
寒い中で頬を赤らめ語り合うカップル達を横目に、相槌を打ちながらアランの一歩後ろを付いていった。
「こっちだよ、エリック!」
幾つかブロックを通り過ぎた時だった。
何時も人前では手を繋ぐのも握られるのも恥ずかしいと嫌がるアランが、夜とはいえ月が明るく照らす下、いきなり俺の手を掴んだかと思うと小走りに駆け出した。
咄嗟の出来事に、俺は転けないようについていくのが精一杯だったが、革手袋越しに伝わってきた体温がアランの今の気持ちなのかと、ふとそんな気がした。
通い慣れた路から外れて数十メートル。
走って、走って、目の前に拓けたのは無数に灯りの散らばる空間だった。
「綺麗だろ?」
満面の笑顔で言うアランの笑顔の先に、無数に耀く星達の下で瞬く色とりどりのライト。
イベント事に疎い俺が気付きもしなかったこの時期催されるイルミネーションだ。
「一緒に…見たかったんだ。」
俺は冷えたの手をコートのポケットへと導くと、そっと握り返した。
クリスマスまであと僅か。
アランは気付いてくれてるだろうか。
明日のメッセージは『rest』だ。