エリアラ-2

□【星の瞬く聖なる夜へ】
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12月16日

「エリック、朝だよ。起きて。」

柔らかい感触を頬に感じ、瞼の裏に透け入る朝日に眉をしかめながら俺は大きく欠伸をした。

付き合うようになってからのお決まりの目覚めだ。

「…ん?あぁ、もうそんな時間か?」

鼻腔を擽る芳しい珈琲の香りを頼りにリビングへ行くと、テーブルには既に朝食が用意されていた。

普段は不器用なアランに代わって俺が食事を作っているが、朝食だけは違う。

どうにもこうにも、朝が苦手なのは治らないようで、引き受けたのにもかかわらず、何度も寝坊しては朝食抜きなんていうヘマをやらかしてきたからか、いつの間にか先に起きたアランが拵える朝食の香りで目覚めるのが日常になっていた。

カップから一口啜ると、眠気の残る頭と身体に絶妙なバランスの苦味と酸味が完全な目覚めを促す。

「お前も上手くなったよな、珈琲いれるの。」

日課のおはようのキスをしながら俺はアランに礼を言った。

「これだけ淹れてて上手くならない訳がないじゃないか。」

子供扱いするかような俺の態度に、いつもむくれた表情で返すアラン。

「はは、ありがとな。」

それが可愛くて可愛くて、つい頭に軽くポンと手を置いちまうんだが、そうすると忽ち頬が桜色に染まっていくんだ。

何処までも初々しさの残る仕草をするアラン。

俺はそれを見る度に、あぁコイツが愛しくて堪らないんだと実感するんだよな。

「朝食くらいは俺にやらせてよ。簡単な物しか出来ないけどさ、君に美味しいって言ってもらえると、その…嬉しいんだもん。」

な?可愛いだろ?
不器用なのも引っ括めて自慢の恋人だ。

と、そんな恋人を見つめながら用意されたトーストにかじりついた時だった。

「ねぇ、これってエリックの字だよね?」

目に前に差し出されたアランの手には、昨夜入れた小さな紙。

「『Please』って何?エリック何か欲しいものでもあるの?」

朝一番に見付けた不思議なメモに、アランは独り頸を傾げていた。

「さぁな。ただ俺が言えるのは、それはお前にやったものだって事だけな。」

「ふぅ…ん。」

この時のアランはまだいまいち理解出来てないような感じだったが、まぁ、次の日も同じことが起これば把握するだろう。

「え?もうこんな時間!?エリック、早く食べちゃって!遅刻しちゃうよ!」

気付けば始業時刻1時間前。

ウィリアムさんの小言を想像した俺達は慌てて自宅を後にした。

でも俺は見逃さなかった。

通勤途中の喧騒の中で、小さな紙をそっと手帳にしまったお前の姿を。



『Smile』

これが、お前に贈る次の言葉だ。
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