エリアラ-2
□【星の瞬く聖なる夜へ】
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12月18日
「あー、疲れた。」
1日の業務を終えて自宅に着くなり、俺は荷物を投げ出してリビングのソファーにどっかと腰掛けた。
傍ではアランがまたかと言わんばかりの苦笑いでそれを拾い集めていく。
「お疲れ様。今日の対象者は大変だったの?」
アランが“死の棘”という不治の病を患ってから、何年経つだろうか。
なるべく身体に負担を掛けさせないようにと回収の殆どを俺が引き受けてきたのだが、その事が余計に心配なのか、アランはよく俺の事を気遣ってくれる。
「あぁ、ちょっと抵抗されちまってな…。
でもま、こんな時期だから仕方ないだろ。」
クリスマスを目前に控えた今、死に行く対象者達の気持ちは解らなくもない。
愛する者がいる対象者だと尚更…な。
「でも、あまり無理はしないでね。任務も大事だけど、その…エリックには怪我してほしくないから、さ。」
現場から離れた場所で案ずるしか出来ないアランを安心させるには、多少の嘘も致し方無い…だろう?
今日の対象者なんて散々抵抗した挙げ句に俺の脇腹に痣を作ってくれやがって、だから心配させるのが嫌で大丈夫な風を装ったのによ、そういう時に限ってすぐバレるんだよな。
心配そうな表情で抱き付いてきたアランの腕の位置が悪かった。
声こそ上げなかったが、痛みに眉をしかめたその瞬間をアランは見逃してくれなかったのだ。
いきなりシャツを捲り上げられたかと思うと、青くなったそこをアランの柔らかい指先が滑っていく。
「やっぱり、怪我してるじゃないか!?なんで隠すんだよ!」
どうやら恋人に心配掛けたくないというのは俺の我が儘に過ぎず、アランの想いとは完全に別だったようだ。
だからなのか、頬を伝う一滴は痛みを何処かへ追いやり、代わりに胸の中へひらりと愛しい人を招き入れさせた。
気障な俺だけどさ、時には言い出せないこともあるんだ。
でもな、何時も心の奥では思ってるよ。
こんな俺を愛してくれてありがとう…ってな。
今日、アランが受け取ったのは『at』
明日の箱には『me』だ。
俺の性格からすりゃ単純に並べればいいってのは、いい加減アイツも気付いただろ。
おっと、この先が分かってもまだアランには黙っといてくれよ。
その…、俺だって恥ずいんだよ。