side REIKO

□”名前”の無い物語
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「……行かないで、ほしい」
「え……?」

唐突に聞こえた『あなた』の声。それは何処か苦しげで今にも泣きそうな、そんな声……。
とはいっても、今は戦いが一段落ついたばっかりで、『あなた』の傷は小さくないものも多いのだから当然といえば当然……か。
でもぜ急にそんな事を?
わたしはただ先生を呼びに行こうとしただけなのに。すぐに帰ってくるつもりだったのに……。

「何言ってるの。先生呼んでくるだけなんだからすぐに帰ってくるよ。それまで静かにして待っててよね? あなたが動いたりしてたら怒られるのわたしなんだから!」

そう言ってわたしは微笑みかけて、座っていた椅子から体を浮かせた。勿論、先生を探しに行くためだった。
でも……それがかえっていけなかったのかもしれない。
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