♪色んな記念夢♪

□5周年記念 その5
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起こさないように、

そうっと、そうっと……


「…どうかした?」

『あ…』


やっぱり無理だった。

起こさないように起き上がろうと頑張ったのにな…

どんな小さい音でも起きちゃうんだから、仕方ないか。


『別に、何でもない。』

「何でもないのに、君がこんな時間に起きることなんてないでしょ。」

『た、たまには目が覚めちゃうこともあるもん。』

「ふぅん、そう。」



それで話を流してくれるのかと思ったら、そうでもなくて。

恭弥はジッとあたしを見つめて無言で問い詰める。

多分、「ベッド抜け出して何をしようとしていたのか」と聞かれている……無言で。


「分かってるなら早く答えなよ。」

『読心術やめてもらえませんか…』

「聞こえて来るんだから仕方ないよ。」



そう言いながら、恭弥はとうとう起き上がって、ベッドに座った状態のあたしを抱き寄せた。

突然のことに対応できず、ひたすら慌てふためく。


『ちょっ…』

「話すまで、離さない。」

『トイレだったらどーすんのよ!』

「そう言った時点で違う。」

『うぅ〜……』



しばらくもぞもぞと抵抗してみたけれど、ダメ。

恭弥は細いクセに力強いんだもん。


と、ついに気付かれた。



「ねぇ……泣いてた?」

『な、ななな、何でそんなっ…!泣いてなんかない!全然違うよ!』

「目…赤いよ。」

『それは寝不足で…』

「違う。」



何で、どうして気付くの?

部屋はこんなに真っ暗なのに。

お互いの顔、ハッキリと見えないハズなのに。



「怖い夢でも見たの?」

『……違うもん。』

「当たりだね。」


微笑しながら、恭弥はあたしの頭を撫でる。

子供をあやすように、抱きしめながら。


ずるい、ずるいよ恭弥。

どうしてそうやって、何でも分かってるみたいに優しくするの。



「どんな夢だったの。」

『………恭弥が、いなくなっちゃう夢。』



夢の中で泣き叫んでいたあたしは、現実でも泣いていたらしい。

咄嗟に涙を拭って顔を洗いに行こうとしたけど、恭弥を起こしてしまったのだ。


『…起こしちゃって、ごめんね。』

「いいよ、そんなの。…それより、」

『恭弥…?』



腕の力をいっそう強めて、恭弥は不満そうに言った。


「気に入らないな、夢の中だとしても。」

『え?』

「僕が君から離れるなんて、ありえないのに。」

『恭弥……』



恭弥の腕の中はあったかくて、あぁ、これは現実なんだって思う。

そんな風に安心したら、強がってたのがバカらしくなった。



『恭弥、好き。愛してる。』

「うん、知ってるよ。」


独特の返答に、思わず小さく笑う。

そしたら恭弥が「もう大丈夫そうだね」って言ったから、「まだダメ」と抱きしめ返した。

すり寄るあたしに軽くため息をついて、恭弥は「仕方のないお嫁さんだね」と言いながら、
おでこに小さなキスを落とした。




』×『優しい雲雀
(悪夢なんて一瞬で、吹き飛ばしてくれる)



fin.

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