♪色んな記念夢♪

□5周年記念 その4
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「ふぁ…」

『あれ?恭弥、起きたの?』


目をこすりながらリビングにやってきた恭弥に声をかけると、何故かムッとした様子で言われた。



「…何で起こしてくれなかったの。」

『だって…気持ち良さそうに寝てたんだもん。恭弥の寝顔が可愛くて…つい♪』

「4時に起こしてって言ったハズだけど。」

『大丈夫、あたしが代わりに書類片付けて、草壁さんに渡しておいたよ。』


草壁さんは本当によくできた部下だと思う。

恭弥が前に指定した時間ピッタリにやってきたんだもの。

当の恭弥は、昨日の乱闘で疲れたのか、いつもより長いお昼寝をしていた。

獄寺くんに聞いた話では、調子に乗ってる勢力に警告(という名の殴り込み)をしに行ったらしい。


ともあれ、きちんと書類は渡しておいたのに、恭弥は更にむっす〜っとしてあたしの隣に座る。

ソファが沈んで、あたしはバランスを取るために座り直した。



「君は、本当に何も言わないんだね。」

『…何が?』

「僕の関わってる社会は、普通じゃないのに。」

『そりゃあね、受け入れるって決めたし。それに、恭弥自身が結構想定外なことしてくれるし。面白いことも好きだし。それに…』



ふと、あたしは横からの視線を感じて話すのをやめた。

隣に座ってる恭弥が、じっとあたしを見ている。


「…続きは?」

『いや、話すけどさ……その前に、何でそんなじぃーっと見てるの?何か付いてる?』

「付いてないよ。ただ……君の横顔、好きだなって思ってた。」



突然何を言い出すのか、この人。

不意打ちにビックリして顔の熱が上がる。


『そ、それって…あたしの話聞いてたの?』

「うん。だから続き話して。」

『うーんと……えーと……ダメだ、忘れちゃった。』



赤くなった顔を逸らして、必死に考えたけど、ダメだった。

あたし、何言おうとしてたっけ…?



「…気になるのに。」

『しょーがないじゃんよー……第一、恭弥が突然変なこと言うから…!』

「僕が?何も変なことなんて言ってないよ。」

『言ったじゃない、もう。』



無自覚な……もしかしたら確信犯かもしれないけど……恭弥から興味を逸らそうとテーブルの上の雑誌を手に取って開いてみる。

そしたらまた、横から突き刺さって来る視線。


『……な、何よ…まだ思い出せないわよ?思いだしたらちゃんと言うから…』

「貸してくれる?」

『え?これ、読みたいの?』

「違うよ……膝貸して。眠い。」

『ひ、膝!?あ、あたしの!?』

「他に誰がいるの。」



テンパるあたしにそう返しながら、恭弥はもう体を傾けていた。

慌てて雑誌を上にあげ、膝を空ける。

柔らかい恭弥の黒髪が少しくすぐったい。


「ふぁぁ…」


恭弥、そんなに疲れてるのかな…

お仕事も結構ハードなのかもしれない。

あたしは書類上のことしか知らないけれど、やっぱり大変なことがたくさんあるハズ。


そんな風に思いながら恭弥の髪を撫でていたら、ふっと思い出した。


『そうだ…』

「思い出したの…?」

『あ、寝てていいよ。恭弥、疲れてるんでしょう?』

「眠いけど…聞きたい。」



スッと手を伸ばして、恭弥はあたしの頬を撫でる。

半分ぼーっとしたような目をしてる恭弥が可愛くて、思わず口元が緩んだ。


『あたしね、面白いことも好きだし……あたしの知らない世界を生きる恭弥について行って、少しでも同じ世界を見てみたいって思ったの。だから結婚しようって思ったの。それを、言いたかった。』

「君は、冒険家みたいだね。」

『ふふ♪』

「でも君が、そうやって気持ちを構えて、待っててくれるから……僕は………」



あたしの頬を撫でる手が止まり、スッと戻っていく。

そして、穏やかな寝息が聞こえてきた。

電池が切れたかのように、恭弥はあたしの膝の上で可愛い寝顔を見せる。


『…起きたら、続き聞かせてね、恭弥。』


そう言って、あたしは恭弥の額に唇を落とした。




』×『甘えんぼな雲雀
(あたしの前でだけ、無防備な君が好き)



fin.

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