♪色んな記念夢♪
□5周年記念 その3
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『でーきたーっ!!』
見た目はちょっとアレだけど、出来た出来たっ♪
せっかくの休日だから、腕によりをかけました!!
奥様特製オムライス!
『恭弥さん、恭弥さんっ、』
「何?」
『お昼ご飯のお時間ですよーっ♪』
「………外食にでも行くの?」
『違いますーっ!!あたしがもう作ったんですから!!』
「え……、」
恭弥さんったら失礼しちゃう、何で硬直してるんでしょう。
飲みかけだったブラックコーヒーを喉に通してから、尋ね返すんです。
「何で?」って。
『そりゃあ、休日ですし……たまにはその…手料理を食べて欲しくて…』
「…僕に出そうとするなら、あの壊滅的な見た目は直ったんだよね?」
『うっ……ま、前よりはマシです…!!』
以前振舞った時、恭弥さんは驚きで箸を持とうとした状態のまま固まっていた。
持った状態じゃなくて、持とうとした状態で。
その姿にショックを受け、まともに作れるようになるまでは恭弥さんにあたしのお料理は出さないようにすると決めたのだ。
で、修業して、今回はマシに出来たんだけど……
『ど、どうぞ!マシですからね!ホントに!』
「…期待せずに見るよ。」
『何でですかぁーっ!』
こんなに言われっ放し、悔しい…!
『じゃじゃん!!』
「……よく出そうと思えるね、ホント。」
『えっ、だ、ダメですか…!?そ、そりゃあ少しは卵焦げてしまいましたし、ライス若干パサパサですけど…』
「割とひどいよ、ソレ。」
『はうっ…!』
恭弥審査委員長……厳しいこと言いなさる…!
「君の評価が甘すぎるよ。コレ、オムライスになりきれてないよ。」
『あたしの定義ではコレはオムライスです!』
「一般的な定義からはズレてるから。」
これでも…これでも頑張ったのに……
ちょっとは上手になったと思ったんだけどなぁ…
確かに、料理は五感で楽しむって言うもんね。
見た目がひどいと視覚的な意味でアウトだよなぁ……
「これ、どんな味するの?味見した?」
『してないです…一つしか作れなかったので…』
「……はぁ、」
恭弥さんが溜め息をついて、渋々スプーンを持つ。
何だか申し訳なくなって、あたしは咄嗟にお皿を引いた。
スプーンを持ったままの恭弥さんは、目を丸くしてあたしを見る。
「何してるの?」
『ちょ、ちょっと味見してきます!あと、自分じゃ分からない面もあると思うので、隣の山本さんに評価してもらいに行ってきます!!』
「ねぇ、ちょっと、」
『では行ってきます!!』
やっぱりあたし、恭弥さんにはおいしく出来たものを食べてもらいたいから。
恭弥さんに失敗作だと思われてしまったら、コレはもう失敗作なのよ。
配膳台を押しながら小走りしていると、不意に腕を引っ張られた。
『わっ…、』
よろめいたあたしは、そのまま後ろから抱きしめられた。
『えっ、えっ?』
ぎゅぅっと、動けないほど強い力に戸惑うばかり。
『恭弥、さん…?』
「何処に行くって?」
『ですから、味見をしてもらいに…隣の山本さんちに…』
「そんなの僕が許すわけないでしょ。」
見えないけれど、多分むすっとした表情をされているんだろうな、と思った。
でも、あたしは美味しい手料理を出したいのであって。
そのために味見してもらうのは必要なことなのに…
そんな風に考えていると、恭弥さんは大きなため息をついて、あたしの耳元でぼそっと零した。
「味見する人間なら、ココにいるでしょ。」
『えっ…?』
それまでとは違った優しい囁きに、心臓が早く脈打つ。
「君も、君の手料理も……全部僕だけのモノだから。」
頑張りは認めてあげる、と言いながら、恭弥さんがオムライスを完食してくれたのは、そのすぐ後の話。
『昼』×『ツンデレ雲雀』
(振り回されるたびに、好きになる)
fin.