Treasure
□Suffering on day of winter
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昴が恭介の暴走?を止めてくれるとは思わない。むしろこの2人がタッグを組むとかなり厄介になる。それは過去のことから嫌というほど経験していて……。
「俺のも恭介のと一緒に飲んじゃってよっ」
恭介とは違う満面の笑みで昴が差し出したのは手のひらに簡単におさまる白い小さな包み。なんというが、シンプル。でも、逆にそれが怖い。むしろ、恐い?
俺はその小さな包みを受け取りながら昴におそるおそる聞いた。
「昴…これは何?」
「なんかさぁ!喜一が風邪で寝込んでるって志津(しづ)に言ったら、くれたんだ。西野家に代々伝わる薬だって。俺も初めて見たんだ」
ちなみに志津さんは昴の家に昔から居るお手伝いさん。俺も結構顔馴染みで、威勢が良くて元気なばぁさんって感じの人だ。
まぁ今はそんなのどうでも良くて…。とりあえず俺はにこにこと笑う昴に無言の圧力を察し、その包みを開けてみる。ごくごく普通ね焦げ茶色の粉末に、そして包みを開けた瞬間に鼻を突く刺激臭。
直感的に思ったことは、こんなのとても飲めるもんじゃねぇってこと。
「昴、申し訳ないけど、無理。パス」
「えーなんでっ。恭介のと一緒に飲めば、効果倍増そうじゃん」
なぁ、と昴は話を恭介と伊織にふる。恭介はニンマリ顔でそれに答え、伊織は「まぁ喜一がそれで治るなら…」みたいな複雑そうな顔してる。味方がいねぇ……。
絶対本能的に、この濁った怪しすぎるジュースと刺激臭を放つ薬の組み合わせがヤバいってことぐらい分かるだろ!
「諦めろ、喜一クン」
最後に聞いたのは、語尾に音符マークがつきそうなくらい上機嫌な恭介の声だった。
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怠い体で阻止しようと奮闘したものの、3人相手にかなうはずもなく、俺は無理矢理怪しげな物体×2を口にした(された)。覚えてるのは舌に触れた瞬間のピリリとした辛さ。それから言い表わしようのない苦いような甘いような……。
それから俺は数時間記憶が無く、3日間舌の奥に残る後味の悪さは消えることは無かった。が、意識が戻った時には喉の痛さもなく、もしかしたら医学的には良い組み合わせだったのかもしれない。味覚的に、2度と御免だけど……。
金輪際風邪はひかないと誓った、俺の14の冬。(もはやトラウマ)
END