Treasure
□Suffering on day of winter
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「喜一久しぶり!」
「平気かよっ」
騒がしく派手に登場の昴に恭介。一応急いで来てくれたのか、かなり息が切れている。
「お前らうるさい。喜一まだ微熱あるんだぞ」
伊織がため息を吐きながらそう言うと、2人は申し訳なさそうにしてその場に座った。どうやら、俺が居なかった間は伊織がちゃんとこいつら(昴と恭介のお騒がせコンビ)を見ててくれたらしい。ちょっと、安心だ。
「喜一っ。せーえばお見舞い買って来たんだ!」
「そうそう」
そう言うと昴と恭介はスーパーの袋を何やら漁り始める。伊織も思い出したように自分の鞄から何かを取り出している。
そして、事件は起こった。始まりの一声は恭介だ。
「これより喜一への見舞いモノ選手権開催しまーす。イェー」
「はぁっ!?」
どうやらこれは俺のいない間に学校で3人が決めたらしく、勝手に始まっていた。…まぁ、久しぶりに騒がしいのも悪くはないか。
「あ、最初は俺からな」
そう言って俺の前に来たのは伊織。はっきり言うと、この中で唯一ちゃんとした物をくれそうだったから、最初に伊織だと後が不安だ。
「食いモンとかじゃなくて悪いけど、授業のノートと部日誌。部日誌は、俺がちゃんと書いておいたから」
差し出されたノート数冊と見慣れた日誌。中を見ると丁寧な字でびっしりと埋められている。
…これは、リアルに助かる。
「まじ助かった。ありがとう伊織」
「そうか?良かった」
あぁ……でも心配なのは残りの2人なんだよなぁ。
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「次は俺でーす」
ニヤニヤと何か後ろに隠し笑みを浮かべるのは恭介。どうしよう、すげぇ嫌だ。
「お前からの見舞いはいらねぇよ」
「びどいよ喜一ぃ。まだ見てさえいないじゃん!」
そう言い笑み浮かべたまま、ゆっくりと俺に差し出したのはペットボトル。中身は……なんかにごってる。
「何この怪しい液体」
「恭介特製風邪撃退ジュース。スーパーで材料調達して、作ってみましたっ」
「……これを俺に飲めと?」
「オフコース!」
びしっ、と親指を立てる恭介。タプンと揺れる、怪しげな液体。うわぁ、絶対、飲みたくない。
「ちょっと待って喜一!」
「昴?」
俺と怪しげな液体とのにらめっこに乱入してきたのは昴だった。