Treasure
□Suffering on day of winter
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俺が熱を出し学校を休み始めてちょうど3日目。伊織と昴と恭介が、見舞いに来ることになった。「風邪を移してしまうから」という理由で見舞いは断ってきたが、「もう3日になるし、心配」と普段はあまり聞けないような真剣な声色で言われ、断りきることができなかった。
大きな病気をしたわけでもないのに見舞いなんて少し恥ずかしいが、実は心配されて嬉しい自分もいる。現金だな、俺も。
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「こんにちわっ!」
玄関から聞き慣れた声がした。3日ぶりのせいか、少し懐かしい気もする。
「伊織?部屋来ていいぞー」
「…喜一!お邪魔しますっ」
ドタドタと階段を上がる音。だんだんとその足音は俺の居る部屋に近づいて来る。そして派手な音をたててドアが開かれたと思えば、やっぱりそこに居たのは伊織だった。
「走ってきたのか?顔真っ赤だし」
「あぁ。部活終わってから、全力疾走でここまで」
「馬鹿か。そんなに急がなくてもいいのに」
「俺が急ぎたかったんだよ。喜一、風邪とかめったにひかないし、心配した」
やはり俺は風邪で弱っているのか。心配、という言葉が、妙に心にしみる。
「昴たちは?」
「途中、見舞い品買うってスーパーに寄ってった」
「そんなの別にいいのに」
ただでさえめったにひかない風邪で、家族にも無駄にたくさんの物を与えられたというのに。ダチにまでそんなの御免だ。
「まぁ、いいじゃん。2人もそれだけ心配してんだよ。で、熱とかもう平気?」
「あぁ、熱はもう微熱程度。まだ喉は痛いけどな。明日の朝、調子良かったら学校行くし」
「無理はすんなよ?インフルではないんだろ?」
「それは大丈夫」
ならいいけど、と言って安心そうに息を吐く伊織。そこに突然、バン!という音とドタドタという音が響いた。声こそ聞こえないが、犯人はすぐに頭に浮かんだ。昴と恭介だ。
バン!は玄関を乱暴に開ける音、ドタドタはうるさく廊下を走る音。というかこの2人は、いくら通い慣れた俺の家だからといって、もう少し常識を持って対応できないものか。伊織はきちんとした対応を、ちゃんとしたというのに。
俺が頭の中でそんなことを考えていてもおかまいなしに、足音はどんどん近くなってくる。そして、一瞬その音がやんだと思うと、やはり玄関と同じように乱暴にドアが開かれた。