BunBoom
□5》number 6
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手にしたボールをリングに向けて、力任せに投げやる。
ボールはバックボードを揺らし、床に落ちて低く跳ね上がった。
リングに入ることを期待したわけではないが、なんとなく納得のいかない気分でボールを追う。
その視線の先、充貴の目は再び陽日を捉えた。
隣には長髪の3年生、本上港の姿。
言葉を交わしている様子の二人だったが、会話が終わったのか、港へと向いていた陽日の顔が、充貴達のいるコートに向けられる。
視線が、交錯した。
あ、と思う間もなかった。
距離があるにも関わらず、その瞬間、充貴と陽日を結ぶ直線上には、視線を遮るものは何もなく。
ぴたりと視点が定められる。
反らせない。
僅かに陽日の表情が変わる。
しまった。
瞬間的に、そう感じた。
同時に、呪縛が解けたかのように、我に返って顔を背ける。
不自然な動作でなかったことを願いながら、充貴は細く息を吐き出した。
心音は、先程に比べれば落ち着いている。
というより運動直後だったために、乱れが意識しづらいのだろう。
そのことに、少し安心した。
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