BunBoom
□1》one's begining
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「…何、知り合い?」
安田の隣にいた生徒が、首を傾げながら問う。
「中学ん時のバスケ部の後輩〜」
「ああ、そういえば安田バスケやってたんだっけ。…えーっと…どうすか? テニス」
呆然と立ち尽くす雄太に、安田の友人らしいテニス部員が声を掛ける。
雄太は慌ててかぶりを振った。
「あ! いや、オレはバスケに――…つか安田先輩、バスケは…!?」
「…あー、バスケはもういいかなって」
「はい!?」
驚きも露に己に詰め寄る雄太に向けて、安田は屈託のない笑みを浮かべる。
「俺飽きっぽいのかもなぁ。なんかもうテニスの方に惹かれちゃって。…ちなみに大学ではサッカーかなー、って」
「せんぱ…!ちょ、…オレ先輩がいるから、八校来たんですよ!先輩とまたプレイしたくて!」
訴えるように雄太が思わず口にした言葉に、
「じゃホラ、テニス部入れよ」
若干照れくさそうに、しかしこれ以上ない爽やかな笑みで安田は入部届を突き出した。
「……いや、遠慮します…」
眩暈すら感じながら入部届を押し戻し、雄太はふらふらと安田達のもとから離れる。
そのままのろのろと校門に歩み寄り、半ば放心状態でその一角に背を預けるようにして寄りかかった。
憧れの先輩と、再び共にバスケがしたいと思っていた。否、できると信じていた。中学時代の記録を軽く塗り替えて、全国を目指すつもりだった。
それなのに。
「…テニスかよ…」
ゆるゆると呟いて、雄太は浅く目を閉じた。
妙に気怠く、どうしようもない喪失感があった。
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