BunBoom

□7》same, each, but
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3限は、辛い。

ちらちらと時計に目をやりながら、雄太はそう思った。
学校生活で1番楽しいのは、部活を除けば昼休み。
しかし空腹、若しくは眠気に耐えながらの3限は、昼休みが近づくにつれて一分一分が驚く程に長くなる。まるで、時計の針に鉛でも仕込まれたようだ。授業終了15分前から時間の流れは緩やかに失速し、最後の5分は、もはや永遠を思わせる。

雄太は頬杖をついて、顔をしかめた。
ゲームの最後の一分なんて、本当に針が文字盤を一周したのかと疑うくらい、あっという間に過ぎるのに。

時計に目を戻す。
ちょうど同じタイミングで、時計の針がかちりと音を立てて、4と重なる。
12時20分。
待ちわびた時間。


チャイムの音が鳴り終わるや否や、雄太のクラスメイト、保志和也が雄太に声をかけた。

「雄太あ、メシどこで食うー?」

「あ俺、今日部室! 4限体育そのまま行く」

教科書を机に突っ込みながら、雄太は席を立つ。
保志は妬みのこもった目を雄太に向けた。

「いいよな、バスケ部は一年も部室使えてー」

保志は軽音楽部だ。
総員19人のバスケ部が部室を二つ持つのに対し、部員50名を誇る軽音部の部室は、しかしどういう訳か一つきり。
部室の数が比例するのは、部員数ではなく部の歴史なのだ。
バスケ部の部室と軽音部のそれでは、遥かに軽音部の方が大きいとはいえ、一つしかない部室は必然的に上級生のものとなる。
バスケ部ほど上下の繋がりが深くない軽音部では、そこに一年が入り込むのは不可能なのだ。

ピースサインを出して見せて、雄太は廊下に足を向けた。

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