BunBoom

□5》number 6
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コートの中で走り回る6人のうち、雄太の動きは誰よりも軽快だった。

「ヘイ」

軽く手を叩いて、味方のパスを誘う。その動作も、どこか他より躍動しているように見えた。

踏み出す足は強く、瞬間的に方向を変えて、対手を翻弄する。
雄太にボールが回る度、ゲームは気持ちよく動き出した。


とはいえ、ほんの一ヶ月前まで中学生だった手前、甘い部分は随所に見えた。

危なげなく敵の間を走り抜け、かと思えば、パスを出すタイミングを誤って あからさまに逡巡し、味方に出した甘いパスを 容易くカットされもする。


しかし、それらを差し引いても、雄太はたいしたプレイヤーだった。


総じて言えるのは 速い、ということ。


ボールを持ってからの雄太の動きは、意表を突くものではないが、しかし簡単に追えるものでもなかった。


相手のディフェンスを巧みに抜いてシュートを決めた雄太を見て、充貴は思わず口元を綻ばせた。

顔合わせのあの日以来、雄太とは毎日のように手合わせを重ねてきている。
だからこそ、いつにも増して雄太の動きが鋭いことに、充貴は気付いていた。
そして それが何か、嬉しい。

否。
楽しい、というべきか。


自分なら雄太を止められる。


そんな根拠のない自信は、幾度となく湧き上がった。

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