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□Karma lady
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「ちょっと…チョンさん!」


「ジェシカ」


私の腕を掴んでずんずん歩く彼女が、一瞬歩みを止めてこちらを振り返り、不自然なほど綺麗な微笑みを作ってみせる。


下の名前で呼べってこと?
私に何も言わせず、再び歩き出すチョンさんの歩みは先程より早い。
まったく、なんでそんなヒールのある靴でそんなに早く歩けるんだろう。



「チョン…ジェシカさん!」


「何、フルネーム呼び?」


「そうじゃなくて!」


エレベーターの中、先に乗り込んだ彼女は当然のようにすぐ壁に寄りかかって腕を組んだから、私が"1階"のボタンを押しながら彼女を軽く睨み付ける。


「行きませんからね、私。何が楽しくて人のデートにくっついてくんですか」


「デート?誰がデートなんて言ったのよ。友達と会うの」


デートだったらさすがにアンタ誘わないわ。と言って、何言ってるの?とばかりに眉を歪めて見せるジェシカさん。
確かに彼女の口から「デートだ」とは聞いてない。けど…



「さっきの電話…いかにも彼氏と話してるって雰囲気でしたけど…」


「甘えさすのが上手な子なのよ。だから私にもつい、ね」



そういうものなの?
よくわからない。
エレベーターの扉が開くと、ジェシカさんはさっさと先に降りて、「だから遠慮してないでいらっしゃい」と私を振り返る。
歩き出す彼女について歩きながら、納得いかない気持ちしかない。


正直、絶対行きたくない。
その人がジェシカさんの彼氏だろうと友達だろうと、初対面の人と楽しくお買い物なんてできるわけがない。
ていうか私、ジェシカさんとも今日初めて会話したようなもんなんですけど?
その友達だって嫌に決まってるよ、私みたいのが急に参加したら。



そう言って反論すればいいのに、なんなんだろう、この人の「何を言っても無駄」な雰囲気。
そういえばなんか「お姫様」みたいなあだ名つけられてたな。
美人だからついたあだ名なのかと思ってたけど、このお姫様気質が元になってるのか?
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