宝石と怪盗.

□紳士
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「!?」


誰かが走ってくるような足音が聞こえた。
や、やばい!!!
隠れなきゃ!


咄嗟に、自分が走ってきた道のりの反対方向にある、すぐそばの木の後ろに隠れた。

足音がだんだんと近くなる。
私の心拍数もそれと合わせて多くなっていた。







森に囲まれた湖。
静かなその湖に1人の怪盗が現れる。


「ったく、あのヤロー…」


宝石を鮮やかに、余裕綽々に盗み出すキザったらしい怪盗ではなかったが。




ちらりと木のかげから顔を出すと、怪盗キッドがいた。
思わず声が出そうになった。かっこよくて。
あの白い衣装を身にまとうあの人が、数メートル先にいる。
信じられないような光景に目が眩む。
今は後ろ姿しか見えないが、雰囲気が、あの声が聞けた。

目に涙が溢れる。本当に嬉しすぎて何も考えられない。


「名探偵のせいで衣装がちょっと汚れちまったしよ〜」


名探偵の馬鹿!と盛大に大きい独り言をかましていらっしゃる。
思わずにやけてしまい、木のかげに再び隠れる。


すると、ぽとっとタイミングよく大きい蜘蛛が目の前に落ちた。


「っ!!!!」


声が出そうになるのを手で抑えたが、この静けさでキッドに気づかれてしまったかもしれない。


冷や汗が流れるのを感じ、もう一度湖のほうに目をやる。


キッドはまだ何か言っており、その声は小さくて聞くことが出来なかった。
不幸中の幸い、とでも言おうかとりあえず安心した。









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