宝石と怪盗.
□緊張
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「さ、ささささささか、かなぁっはやめとかない?」
魚の“な”が裏返り、悶えるような声で答えた。
ダラダラと汗を流し、顔色は真っ青だ。
口は笑っているが、ひきつっている。目の前にいる瀬戸瑞紀は、完全に動揺していた。
「……」
てゆうことは、彼は一般人の瀬戸瑞紀という人物ではなくて本物の黒羽快斗…っ!!!?
嘘、嘘、嘘嘘嘘嘘ーーーっっ!!!!
興奮による気分上昇のため、
ふらりと立ちくらみしたのを感じた。
あ、やばい。なんか出そう。鼻血出そう。待って、その前に息がつ、つまっ「お、おい?」
もう魚からは復活したようで、立ちくらみ(興奮によるもの)した私を心配して顔をのぞき込んだ。
「っ…ち、ちちちち近っ!!!」
あまりの近さと黒羽快斗だという事実に驚いたままだったので、軽くパニックになってしまった。
今の顔は偽物でも、緊張してしまう。
「わ、わりー!」
パッと離れると気まずそうに横を向き、ズボンのポケットに手を入れた。
「や、大丈夫!なんも問題ないから!こちらこそごめんっ」
「立ちくらみしてたみたいだけど大丈夫なのか?」
「あ、あれはちょっとコケそうになったみたいなものだから全然平気!」
そっか、よかった。と言った彼の声は優しくて。
「さっきの話だけど、カフェとかどう?」
カフェかぁ…。
チョコアイス食べるんだろうな、きっと。
「うん、いいと思う!」
私は笑顔でこたえ、瀬戸瑞紀も笑った。
そしてチラリと腕時計を気にした彼を見て、あぁそっか。予告時間までもう少しなんだ、と気づいた。
「ごめん!俺このあと用事あるから急いで帰らないといけねーんだ」
「うん!わかった」
「送れなくて悪いな」
しょうがない、これからキッドになるからね!と言いたい衝動を抑えて大丈夫、と答えた。
そこでさよならをして瀬戸瑞紀は走っていった。そして少し経って私も歩き外にあるベンチに腰掛けた。
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