short(裏)

□仕返し
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昨日の夜、快斗と喧嘩した。

すっごいどうでもいいことなんだけど。



で、頭にきて今日の夕食の隠し味にほんのちょっと魚をすり潰して味噌汁に入れてやったら1口飲んだあとにすごい怒られた。泣きながら。怒るのか泣くのかどっちかにして、と心の中で苦笑しているとそれを感じとったようでムスッとこちらを見ている。




「…ちょっとやりすぎたごめんね?」




私は味噌汁を飲み終え茶碗とお箸をテーブルに置き、そう言った。棒読みだけどね。



「…オメーこのあと覚えとけよ」



ニヤリと怒りを少し含んだ笑みを私に見せ、食べ終わった食器を運ぶ。それから食器を洗い終えてすぐに風呂場へと向かっていった。







お風呂のドアがしまる音がすると私は急いで食べ終えた食器を洗い、光の速さで歯を磨いた。



まずい、やっちゃった。これからのことを考えると嫌な予感しかしない。どうしよう。
顔を青くさせリビングを歩き回る。
快斗がお風呂終わる前に仕返しを回避できそうなことを考えなくちゃ…!!







1分が経過したころにピンときた。


「そーだ!寝たふりをしよう!!(小声)」




今までで1番早いんじゃないかというスピードで寝室のベットへと向かい、うつ伏せになるようにダイブする。もしこの計画が危なくなっても顔が見れないうつ伏せの状態ならどんな顔しててもきっと!バレないのでこうしていよう。そうしよう!




1番いいのは本当にこのまま寝ることなんだけど、こんな緊張状態で寝れるわけない。ため息をつこうとしたその瞬間、





「寝てんの?」




ギシ、とベットが音を立てる。





さっすが天才マジシャン!音全然しなかったんだけど!!!まず部屋に入ってきたことも分かんなかったよ!!!しかーし!私はうつ伏せになっているので表情を読み取れないんでしたー、ざんねーん!ケケケっと快斗の真似をしてみた。(心の中で)
どんだけ声かけられても無視して寝たふりすれば快斗もきっと諦めてくれる!はず…!







「…………」











ん……??
あれ?何も動きがない、だと…?


快斗が私が空けた分のベットの隅に座ってることは分かるんだけどさっきから何も言わないし動かない。
くそ、うつ伏せって結構意識してたら疲れるんだぞ!はよ寝ろよ!なんてついつい考えちゃうよね(てへぺろ)





「なぁ真緒…」



耳元で呟かれ思わずピクッと反応してしまった(小さな動きだったし気づかれてないだろ)。快斗の様子を探ろうとしたけれどうつ伏せになっているため快斗がどんな顔をしているのかさえ分からない。




ギシ、ギシとベットが再び音をたてる。
快斗が私の上に覆いかぶさりぎゅっと抱きしめた。






「寝てても起きてても仕返しするから」



そう言いながら耳朶をはむ、っと甘噛みして唇を離したり、息をふぅ、と耳に吹かれる。耳が弱いことを知った上で片方の耳だけに触れてくる。寝たふりなんかやめなよ、とでも言うかわりに舌を耳の中に入れたり出したり、ぴちゃぴちゃと音をたてしつこく責める。



「っ…んぅ」


我慢できず声が漏れたが快斗はピクリとも反応を示さず、今度は耳の裏を集中的に舐め上げている。



ぞくぞく、と鳥肌が立ちそれと同時に体制を変えられて快斗(天井方向)を見上げる形になった。急に体制を変えられたので目が見開いたままだった。起きていることが完全にバレてしまった、こんなの降参するしかない。声や動くことを我慢していたせいか目にうっすらと涙が浮かぶ。快斗と目が合い、睨みつける。




「…ずるい」


私の言葉に目を見開きフッと笑いをこぼし、すぐに言葉を返す。


「寝たふりしてたヤツに言われたくねーよ」


「う、うっさい」


バレてたのか…、と内心落ち込みながらも言い返す。するとニヤリと黒い笑みを浮かべ、

「まさか今のが仕返し、とか思ってる?」


と言うと、驚く声をあげる前に口を塞がれた。息が続かなくなり酸素を求めようと口を開けるとぬるっと舌が入ってきて逃げていた私の舌も既に捕らえられ、二つの舌が口内で絡み合う。くちゅくちゅと舌と舌が絡み合い激しさを増し、涎が混じりあって口の端から流れる。酸欠で頭がぽーっとしてきたころ、快斗はやっと唇を離し、銀の糸が繋ぎ、ぷつりと切れる。


はあ、はあと荒い息を整え、快斗を見上げる。目が合うと快斗はニヤリと笑った。視線や雰囲気、笑い方がエロくて思わず目をそらす。いつまで経ってもこの色気には慣れない、そう心の中で悔しがったそのとき、快斗は片手で私の両手首を頭上で交差させ私が抵抗があるできないようにさせると鎖骨あたりに口を寄せる。ちゅ、と触れるだけのキス。次はぺろ、と舐める。

「くすぐったい」と言おうとしたが、つー、と首筋を舌で舐めあげられ最後まで言えなかった。
いつの間にか服を脱がされブラだけが露になった肌に快斗は好物のアイスでも食べているかのように楽しそうに舐める。

「……なぁ 今のもくすぐってえの?」

「〜っ!!」

上目遣いで無邪気にじっと見つめられる。恥ずかしくて顔を隠したいのに拘束されていて隠せない。


「…手首痛い、暴れないから離して?ね?」


「やっぱ嘘つくの下手だな」

「……」

…快斗、嘘はすぐ見抜いちゃうから敵わないなちくしょう。快斗をムッとした顔で睨む。


「しゃーねーなぁ」


はいはい、と言って掴んでいる手を離す。

ほっとしたのもつかの間、がちゃりと頭上で音が聞こえた。


「え?」



音の正体に嫌な予感はもちろんした。予感は当たっていて、つけられたのは手錠だった。


「ねぇちょっと快斗くん?」

お願いだから外して、という思いを込め快斗をみつめる。

「なぁに?」

語尾にハートでも付きそうなほどの甘い声を耳元で囁かれる。言いたい事は分かってるくせに知らんぷりをして私の反応を楽しんでいる。

「〜っ!!も、もう充分仕返しされたじゃん」

そう涙目になって言い返すと肩あたりに顔をうずめてぢゅっと音がするのと同時に少し痛みが走った。

「何言ってんの」

私を見上げるとまだ触れてない方の耳を指で触り始める。

「これから仕返しするんだけど?」

びくっと肩が震え思わず小さい高い声が出る。快斗の甘くて低い声も耳を触られるのも弱い私にとって声を我慢できるはずがなく。

「相変わらず耳、よく感じるな……あと俺の声も」

「ひゃ、………ちょっんぁ…わざ、と」

私に話しかけるときも執拗に耳を舐めくりまわすのでゾクゾクしてまともに言い返すことができない。

「…真緒」

快斗がもう片方の耳もやわやわと触り始めると、それに耐えられなくて目をギュッと瞑る。でも逆に耳を意識してしまい感じやすくなってしまう。


「………えっろ」

「やぁ…!ば、かっ」

もういい加減耳元で喋るのはやめろ!という意味を込めて足で抵抗しようとしたのだが力が抜けた私にそんな抵抗をされてもびくともせずちゅ、ちゅと首元や鎖骨にキスを落とす。

「や、なの…?」

「…っ」

だからその声はズルイって…。数秒しんとなり、見つめていた目を逸らしながら

「やじゃないけど、」

と小さい声で呟いた。



「うん…今日は耳だけでイかせてあげるから」



悪魔のような顔をした快斗は、今日1番の甘い声で私に死刑宣告を言い渡した。





 

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