短編

□奇妙な三角関係。
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朝日が登り始めた頃、チャイムが鳴った。




ーーー...ーン....ピンポーン....




「…ん...」



こんな早くから、誰か、来た....?






ーーーードンドン!ドン、ドンドン!



「!?」


激しいノック...と言うか、ドアを殴る音に、ぼーっとしていた頭が覚醒した。


怪我人だろうか。
この町のことだから、あり得ないことはない。


どんな大怪我をしてるだろうか、首はちゃんとついているだろうかと恐る恐るドアを開けると、


「あ…フリッピーか、良かった」

血みどろの誰かを想像していたが、隣に住むフリッピーで安心した。

ついでに言うと、フリッピーは私の恋人だ。


「なまえ.......」


フリッピーは私の頬に優しく触れて、溜め息を吐くように呟いた。

その顔が、声が今にも泣きそうで、不安になった。



ーーーーーーーーーーーーー


「フリッピー」

「うん」

「どうしたの」

「....うん」


さっきからずっとこの調子だ。


あのあと玄関でそのまま抱き締められ、ずっと離そうとしないものだから困った。


なんとか説得し、ソファーまで来たが、フリッピーは私の手をぎゅっと握り締め、抱き締めたまま動かない。


訳を聞いても、『うん』としか言わないし...


私は諦めてフリッピーの頭をなで始めた。

うわさらさら。





「……あのね、なまえ….」

「ん?」


「情けない話だけど、聞いてくれる?」

「もちろん」

「.......…」


フリッピーは更に私を強く抱き締め、意を決したように話始めた。


「夢を、夢を見たんだ。」

「夢?」

「僕が覚醒して、なまえに会いに行ったみたいで、」

「うん」

「何があったかは分からないけど、覚醒となまえがすごく仲良くなってたんだ。僕が入る隙間もないくらいに。そしてね、なまえが僕に、『あなたより覚醒の方が魅力的。その身体、覚醒に渡してよ』って.....それで、僕不安になっちゃって....」

「.....そっか」



泣いているのか怖いのか分からないがフリッピーは震えていた。


「なまえ、なまえは僕のだよね?覚醒のじゃないよね?」

「....私は、フリッピーのものだよ」


覚醒も含めて、フリッピー。
どちらのものなんて決めることが出来ない。


「うん....」


私の答えを、自分だけのものと言ったと受け取ったようで、フリッピーは柔らかく微笑んで、私の肩に顔を押し付けた。





少しすると、疲れていたのかフリッピーから寝息が聞こえてきた。


肩に体重がかかって正直重い.....。


そーっと起こさないように、フリッピーの頭を私の太ももに移動させた。



綺麗な顔だなぁと、じっと見ていると、瞼がぴくっと動いた。

視線で起こしてしまったのかと焦ったが、開かれた瞼から覗いたのは、金色の瞳。
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