短編
□みんなのHERO
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「おっそい....」
遅い遅い遅い遅い。
折角いつもいつも忙しいあいつとのデートだというのに、あいつはまだ来ないのか。
もう1時間以上も待ってるんだけど。
あ、来た。
真っ青な空に溶け込みそうな色の服を着た英雄さんが。
「なまえ!ごめん!遅くなっちゃった」
ヘラヘラと頭を掻きながら私に近付いてくる。
「ディド、今何時?」
「......2時30分です」
「約束してた時間は?」
「うっ.....1時です....」
何してたか、なんて聞かなくても分かる。
この人はヒーローだもの。
人助け。
それしかない。
ディドのしている事を止めろとは言えない。
結果的に人殺しでも、ディドは善意でやってる。
私のワガママで辞めさせるわけにはいかない。
でも....でもさ......。
「別れよ、ディド」
苦しいの。
「え.....?」
ディドは訳が分からないというような笑顔で私を見る。
「え、なまえ?ははは、そんな冗談やめてくれよ......」
「.......」
「.....嫌だ.....嫌だよ....!俺が、俺が人助けなんてするから?なまえと別れるくらいなら俺人助けしな「ディド!」」
「私は、ヒーローじゃないディドなんて、人を見殺しにするディドなんて見たくないの。
だから、だから別れるの。」
私は精一杯笑ってみせた。
きっと、涙でぐちゃぐちゃなんだろうけど。
「じゃあ、今までありがとう。楽しかった。」
大好きだよ。
早くここから立ち去らないと。
今より酷い顔で泣いちゃいそう。
ディドから離れていく。
後ろから「....なまえ.....」と呟く声が聞こえた。
自分勝手でごめんね。これからは私のことなんて気にせずにヒーローになってね。