小説
□月下で出会った人の名は
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彼女は幼い時から特別だった。
彼女の髪と瞳の色は漆黒である。それは、先祖が為した契約の証だ。
彼女は三火候補として育てられ、無事に三火の1人に選ばれた。
――美しい見目を持つ彼女は、名をリーテースという。これは、新たなランガとなった16歳の少女の物語。
それは、ランガとなってしばらく経った頃のこと。
リーテースは、ほぼ毎晩のように同じ夢を見るようになった。
夢の内容は、夜の城を裸足で歩き回るというだけのこと。ただ、普通の夢とは違う感じがした。どこがどう、とは説明できないのだが。
夜回りの兵士などに見付からないように歩き回るうちに、夢は彼女の密かな楽しみになっていた。