ある日突然、トリップというものをしてしまいまして

□アンビリーバボー!
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「・・・なんだよぉ、ヒック、私が何したってぇんだあのくそやろぉ・・・」

時刻は0時をまわった辺り。
そして私は3件目をまわった辺りから意識が混濁ぎみだ。
誰に言うでもなく、次々と罵詈雑言ともとれる言葉を吐き出しながらフラフラとネオンの町中を歩いた。
端から見れば、なんて女だと思われてるだろうけどそんなのもうどうでもいいもんね!

・・・それなりの大学を卒業し、大手の上場企業に入社して3年目になろうというところ。大事なプレゼンに失敗した私が、東京の本社から京都の支社へと左遷を宣告され早1週間。
いざ左遷されたオフィスに配属されてみれば思ったよりもだいぶ小さな規模に、ちきしょう、辞めようかな、なんて思いがちらほら出てきた今日この頃。
会社帰りにふらりと立ち寄った居酒屋で、ついつい浴びるように酒を飲んでしまった。
もともと酒は大好きなんだけど、最近は忙しくて少し控えてたからね。あっという間に酔いがまわって、深夜に新橋にいるおっさんのようになってしまったわ。
女の一人酒が悪いかこのやろうと開き直り、勢いで居酒屋とバーを梯子したがどうやら限界が来たようだ。

思考がほぼ停止している頭を無理矢理働かせ、フラフラと千鳥足で一人暮らしのアパートを目指して歩けば、どこをどう間違ってしまったのかたどり着いたのは咲き乱れる桜の木の下にポツンと建っている古ぼけた神社だった。

さすがは古都と呼ばれる京都。そこいら中に神社や寺なんぞがあるのねぇ。よし、金持ちイケメンと出逢って寿退社できるようにちょっくらお詣りでもしておこうか。
そんな私の今の彼氏はもっぱら二次元ですけど何か?

よっこいしょ、と、社に近付けばふいに襲われた目眩。
あれれ、今夜は本当に呑みすぎた。このままだとお詣りどころか家にも帰れねーんじゃねぇの。
ヤバイヤバイと社の真ん中にぶら下がっている鈴の縄を掴めばガランガランと鈴の音が辺りに鳴り響いた。
そして次の瞬間。
酔っ払いの私の意識はそこで途切れたのである。





・・・うん。途切れた。私の曖昧な記憶は確かにそこで途切れたのだ。
でもさ、でもさ・・・
「やべぇ、寝ちゃった!!!!」って飛び起きてみれば、なにゆえ私は布団の上にいるのだ。そしてここはどこ?この古い日本家屋はどこぞの誰さんの家?そしてそして・・・

「い、痛い・・・」

なんで私ってば縛られてるの?




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