short stories

□見つめて。
2ページ/4ページ



「そういえばさ、」

既に沙祐と私の二人きりになった教室で、沙祐は突然話を切り出した。

「何?」
「六花、氷室のこと好きじゃん?」
「う、うん。」

改めてそう言われると少々気恥ずかしいものがある。

「始業式の時、氷室がさ、六花の事見てた気がする」
「はぁぁあ!?!?」

私が見ていた時は、確かに隣の子と話していた。
私が氷室くんから目を離したとき……
あ。私、寝おちしたんだった。結局。

「六花が寝てた時もずっと見てたよ。」
「………何だかなぁ…………」

嬉しくない筈はない……のだけれど、ただ単に、コイツ寝てる!みたいな事ではないのだろうか。

……………ん?
ちょっと待って。

「寝てた時"も"?」
「そうだよ。」

その一部始終を見ていた沙祐にも驚くけど、私を見ていた(らしい)氷室くんにも驚く。

「………うーん……」
「脈ありなんだって!!当たって砕けろ!!」
「砕けたくないから!!」

本当に砕けたら洒落にならないからやめていただきたい。

「諦めたらそこで試合終了だよ。」
「確かに氷室くんバスケ部…………じゃなくてさ!!!!」

あぁ、もう……
どうしたらいいんだろ。
よくある、卒業式の告白なんてあるけど、そこまで待てる気がしない。

「うーん。……お腹すいたから帰ろう!」
「いつになく急だね」

とはいえ、私もお腹がすいてきていたから良いタイミングだった。
荷物を持って教室を出ると、隣の教室から誰かが出てきた。
………と同時に、私は沙祐に背中をドンッと押された。

「(がんばれ☆)」

沙祐の目がそう言っていた。
前を向くと、

「……ひ、氷室くん………!?」

氷室くんが目を丸くして私を見ていた。
沙祐………覚えてろ……!!

「不知火さんだよね?」
「う、うん……!」

廊下にはまだ帰らずに友達と話している女子生徒が数名。
何だかこの状況に余計に緊張が増した。

「………教室入ろうか。」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ