short stories

□何と云おうと
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とりあえず、俺は神宮寺を探すことにした。
今までの行動からして、行きそうなのは中庭や、談話室。
屋内から中庭を見ても、誰もいない。
……となると、談話室か……。

談話室に近づくにつれて、話し声が聞こえてくる。
もう少し近づくと、それは神宮寺と七海の声だと分かった。
……やはり七海だったか。
入るのもどうかと思い、そっと聞き耳を立てた。

「────そりゃ、愛してるさ。誰よりも」
「……………!?!?」

何と言った………?
あいつは……神宮寺は今、確かに……愛してる、と………

俺は気付いたらその場から走って逃げ出していた。
「……外、誰かいたんでしょうか……足音が……」
「………ちょっと行ってくるよ。」


結局俺は、また部屋に戻ってきていた。
さっきとは違って、部屋には黒崎さんがいた。

「……黒崎…さん…」
「あ?どうした、真斗。」
「……っ、いえ……なんでもありません。」

柄にもなく溢れそうになった涙をなんとか抑え、落ち着こうとピアノの前に座った。
………しかしどうも落ち着かない。

「……おい、真斗………」
「何、ですか……?」
「お前、何泣いてんだ……?」

そう言われ、自分の目元にそっと触れた。
すると確かに涙は流れていた。
完全に、無意識だった。

「さっきも血相変えて走ってっただろ。何かあったのか?」

いつもとトーンの違う、優しめの声で黒崎さんは俺に訊いた。
だが、堪えようにも言葉が詰まってなかなか出てこない。

「(重症だな……)………レンか?」
「……!!!!!」
「やっぱりな。……で、レンと何かあったのか?」

言葉を詰まらせながらも、少しずつあったことを話した。
黒崎さんのことだ。女かよ、と笑われるに違いない。
だが、話をしている間黒崎さんは真剣に聞いてくれていた。
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