Song's stories
□You're in my heart
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───その日の放課後。
大会前の最後の休みで、久々に図書室にでも行こうかと廊下を歩いていた。
料理の本でも見ようか、そんな事を考えていた。
「───お、俺…!」
階段の方から声が聞こえた。
「……笠原のこと好きなんだ」
…………………え?!
笠原さん、のこと……
と言うか聞いてしまった…。
………ちょっと…待って……
この声って……若松さん………
…ますます負の感情しかわかない。
図書室に行こう。
早く忘れてしまえばいい。
「はぁ………」
若松さんも笠原さんのこと好きなんだ…
……後聞かなかったけど付き合うのかな…
「嫌だな…」
……どうも落ち着かない。
仕方ないから帰る事にした。
昇降口まで来たところで、偶然笠原を見かけた。
桃井さんと一緒に帰るようだ。
「あ、桜井くん。」
「!!!!!」
あろうことか桃井さんは僕に話しかけてきた。
笠原さんいるのに…
「ちょっと……!!!」
急いで靴に履き替えて走り出していた。
「すいません!!!」
さっき若松さんに告白されているのを聞いてしまったから、笠原さんを見るのも辛いほどなのに。
自分でも女々しさに嫌気が差した。
家に付いて、部屋に戻って制服を脱いで着替えて、しばらくしてから夕食をとって、お風呂にも入った。
けどやっぱり、鮮明に思い出される。
「………ふぅ…」
さっさと寝よう。
そう思っても妙な胸騒ぎがして眠れない。
窓から見える星空を見上げていると、どういうわけか涙が込み上げる。
流しこそしないものの、それはそれは不安で胸はいっぱいだ。
特攻隊長なんて言われたって実際はこんなやつ。
………桃井さんに聞くしかないかな……。
───何だかんだで眠りについて、朝練のためにもいつも通り早起き。
弁当も作って、準備は万端。
「いってきます」
そう言って家を出た。
そこから学校まではいつもと変わらない道のり。
校門を過ぎてから、だ。
いつもと違ったことは。
『……あ』
「……笠原さん…!?」
幸か不幸か、笠原さんが桜の木の所で立っていた。
あれ?
こんな朝早くからやってるのバスケ部とかサッカー部とかその辺りくらいなはず…。
『……花言葉。分かった?』
「あ、えっと……桜ってたくさん花言葉ありますよね…」
上手く話せてるだろうか。
『…そうだね。…でも私が言いたいのは一つだけ。』
「一つ……」
『そう、一つだよ。』
そう言いながら笠原さんは僕に近寄った。
……近い…結構近い。
『……"あなたに微笑む"』
「え……?」
その言葉と同時に、確かに僕をみて微笑んだ。
余計に胸がドキドキする。
『………桜井くん。』
「はっ、はい!!!」
名前…と言うか名字知ってたんだ
桃井さんからかな…?
『……私、どうやら桜井くんの事が好きみたい』
……………えっ、…え?
笠原さんが?僕を?
…じゃあ若松さんとは何もなかったと…
『さつきがね、朝練の前なら時間あるよ、って言ってくれたから。早起きしてみた。』
そう言えば少し眠そうな顔をしている。
僕に…こ、告白する…ためだけに……?