short stories
□こんな彼でも
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──重い瞼を開けると、カーテンで遮られた光が微かに漏れるだけの薄暗い部屋にいた。
手を動かすと、ガシャッという音がした。
その方向を見ると、両手首に手錠がされている。
そのまま、外の光を拝もうとカーテンを開こうとしたとき、部屋のドアが開いた。
「……何をしている。六花」
突如聞こえた低い声に、私の体がブルッと震えた。
段々、足音が近づいてくるけれど、その方向を向けない。
「答えろ」
「………外、見ようかなって………………!」
「……外は何かと危険があると言った筈だが?」
頭をガシッと掴まれ、強引に目を合わせられる。
こんな空間でも、水晶のようなスカイブルーの目は、ひどく美しかった。
「……ごめ、ん…なさい。」
「……ふん。分かれば良い。」
そして、手を乱雑に離される。
…と同時に、私は崩れ落ちた。
こんな事になったのも、全て彼の──……カミュの独占欲からだけれど、最初は嬉しささえ感じたそれが今では恐怖に成り果てた。
何度も逃げようとした。
けど、結局何も出来ていないのだ。
「そうだ、六花。今日はお前の好きなケーキを買ってきた。食べるか?」
「…食べる。」
こういった時は、カミュが私に食べさせるのが普通だ。
手錠で手が使えないし、取る気もないから、らしい。
一度だけ、カミュが寝込んだ事があって、その時は藍が来てくれた。
藍は、私をここから連れ出そうとしたけれど、私はそれを断った。
自分でも何故そうしたかわからなかった。
ただ、意思ではなくて、本能がそうさせたのだと思った。
ケーキを食べ終わったところで、カミュはキッチンへ皿を置きに行った。
私は、気付いたらその背中を食い入るように見つめていた。