short/温かな光
□跳ぶ理由
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今回の壁外調査は、1ヶ月かかった。
104期生が入団してから、巨人との闘い方が変わった。
エレン・イェーガーの巨人化に頭を使い、ミカサ・アッカーマンのずば抜けた身体能力に驚かされる、そんな毎日だった。
それにしても…あぁ、ナマエはどうしているだろうか。
毎晩泣いているんじゃないだろうか。
それとも、まさか他の男に…いやいやそれはない。そんな事があってみろ。相手のうなじを削いでやる。
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鐘が鳴り、多数の見物人が押し寄せる。
おおかた死人の数を数えて、税金の無駄遣いだとかなんとか話をしているんだろう。
…時折、目を輝かせて調査兵団を見つめるガキを見つけたりもする。
そんな時は自分が今どんな気持ちなのか、わからない。
その中に、慌てて仕事を抜けてきたのだろう、笑顔のナマエの姿を見つけた。隣にエルヴインの野郎がいるのが少しだけ癪に触ったが、ナマエの柔らかな表情を見て、俺は生きて帰ってきたのだと改めて幸福を感じた。
ナマエと目が合うと、ナマエは涙を浮かべた表情で、いっそう優しく微笑んだ。
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鐘が鳴った。
調査兵団が壁外調査から帰ってきた!
その瞬間、涙が溢れて止まらなくなった。
1ヶ月……
リヴァイはそこにいるだろうか。
怪我などしてはいないだろうか。
…わたしの事を、忘れてはいないだろうか。
「ナマエ」
ノックの音に返事をすると、そこにはエルヴイン団長が立っていた。
「彼らを迎えに行こう」
「でも、仕事が…」
「リヴァイを迎えに行こう。ずっと心配だったんだろう。よく我慢したね」
団長に頭を撫でられて、更に涙が零れた。
「大丈夫だよ。彼は人類最強で、君を大切に思ってる男だ。君のために、無事に帰ってくるよ」
その声に引かれるままに、わたしは調査兵団の出迎えに足を運んだ。