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□お掃除お姉さん
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「エルド、なんだこの部屋は。埃が舞っている」

「や、やり直します!」

「オルオは便所だ。グンタは廊下を掃け。ペトラはシーツをもう一度洗ってこい」


どいつもこいつも、巨人の討伐に関してはなかなか腕が立つのに、掃除となると手抜きだらけだ。
今や日課となっている掃除は、だからこそ手抜きになってしまうのだろうか。





「エルヴィン」

「ん?どうした、リヴァイ」

「俺の部屋を徹底的に掃除してくれる奴を雇ってくれないか。兵士どもじゃ全くダメだ。落ち着いて眠れん。仕事もはかどらん」

「そこまで言うなら仕方ない。明日には手配しよう」

「助かる」





そして翌日。


「ナマエです。よろしくお願いします」


と現れたのは、なんとも華奢な少女だった。まぁいい。俺の部屋を徹底的に掃除してくれるなら、ガキでも婆さんでも爺さんでも構わない。
その代わり、ペトラが「私じゃダメなんだー」とか言ってしょげていたのは後でフォローが必要だな。(エルヴィンがそう言っていた)


「リヴァイ兵長のお部屋の掃除なんて、夢のようです」

「甘えた事言ってんじゃねえ。チリひとつ残してみろ。即クビだ」

「はい!」


ハキハキと笑う少女に、俺は不思議な感覚を覚えた。思わず、つられて笑ってしまうような…。


「なになにどうしたのリヴァイ!なんか表情が緩んでるけどー!」

「うるせえクソメガネ!!」





そうして訓練から帰った俺が目にしたものは、眩しいほどに輝いている自室だった。


「お疲れ様です、兵長」

「…ああ」


ナマエはそう言って俺のジャケットを受け取りハンガーに掛ける。


「掃除の後に、速乾性のワックスで床を磨いてみました。ベッドやチェストも同様に。ただ…」

「なんだ」

「窓の方までは時間が足りず、窓は明日磨かせていただけますでしょうか」

「構わん」

「はぁ…良かった!では、何かお飲み物を淹れますね。何がよろしいですか?」


そうナマエの向かった食器棚の中も、完璧なまでにピカピカになっている。


「紅茶を淹れてくれ」

「はい、かしこまりました」


その手つきを見ていると、もしかしてナマエはどこか名家の少女ではないかとさえ思えてきた。


「はい、お待たせ致しました」


それはとてもまろやかな香りを放ち、今までの茶葉と同じとは思えないほど美しい味わいだった。


「では兵長。わたしはこれで」

「待て」

「…はい」

「シーツは、替えてくれたか」

「はい。兵長が安眠できるよう熱したコテで伸ばしておきました」

「…一緒に寝るか」

「は、い?」


俺は今とんでもない事を口走ってしまった。


「あ、あの…」

「冗談だ。さっさと帰れ」

「ふふ、兵長でもそんな冗談仰るんですね。だけどわたし、兵長がお望みならいつでも」


ナマエは柔らかく笑い「なんちゃって。…おやすみなさい」と部屋を後にした。

よし、明日は本気で言ってみよう。なんて俺らしくもない事を考えてみたりした。





翌日も、ナマエは笑顔で現れ、


「今日は窓のお掃除をして、ちゃんとお部屋のお掃除もしますからね」

「ああ、頼む」

「他にご要望はありますか?あ、庭のお手入れとかは?」

「お前の仕事は俺の自室の掃除だ。それ以上は構わなくていい」

「はい、かしこまりました」





そして部屋に帰れば、昨日より更に部屋が美しくなっていた。


「ナマエ、お前は何者だ」

「へ?」

「ここまで短時間で掃除を済ませられるなんて」

「兵長が巨人に負けない力を持ってるように、わたしも掃除では誰にも負けません!」


とナマエはにっこり笑った。
きっと世の中の男に言わせりゃ、こいつは間違いなく『可愛い』という部類に入る女なんだろう。


「兵長」

「どうした」

「シーツの寝心地は、いかがでした?」

「……一緒に寝てみるか」

「え、またまた、兵長ったら」

「俺は本気だぞ」


ナマエの頬が赤く染まり瞳が大きく見開いたのを見て、俺は咄嗟にナマエを抱き締めてベッドへ放り込んだ。


「シーツがシワになったら、また伸ばしてくれ」

「か、かしこまりまし…」


言葉が終わるか終わらないかのうちに、ナマエに覆い被さってキスをした。抵抗の色はない。


「へ、兵長……」

「なんだ。止まらねぇぞ」

「わたし…ずっとずっと、兵長が好きです」

「…は?」


その言葉の真意がわからぬまま、更にキスを深める。


「ん、へいちょ…わたし、んっ」

「ナマエ…」

「っは…わたし、これ以上あなたを好きになっても、いいんでしょうか…っ」

「好きだ、ナマエ。だからお前も、もっと俺を好きになれ」


ナマエはまた驚いた表情を見せて、


「かしこまりました」


と笑った。








Ende.

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