short/song

□cappuccino
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「雨だな」

「…雨だね」


リヴァイと街に買い物に来て、雨に降られてしまった。お店の軒下で体を寄せ合う。というか、わたしがリヴァイにピタリと体を寄せている。


「腹が減ったな」

「…早く本部に帰りたいね。この雨、上がるかな」

「いつか上がんだろ」


と、リヴァイは荷物を持つ反対の手でわたしの手を握った。


「温かいね、リヴァイの手」

「ほら、走るぞ」

「え?」

「向こうのカフェだ」


リヴァイに手を引かれて雨の中を駆け、道の反対側にあるカフェに入る。
カランカランと入り口で音が響く。シックな落ち着いた雰囲気で、カウンターに酒のボトルが並べられているのをみると、夜は飲み屋に変わるのであろう店だった。

テーブル席に座って、リヴァイがカプチーノをふたつ頼む。

そしてわたしはこの沈黙を破るように、一人では抱えきれていなかった想いを吐露した。


「ねぇリヴァイ…わたし、兵士に向いてないかもしれない」

「何言ってんだいきなり」

「あのね…」


この先は、口にしては怒られるだろうか。だけどリヴァイは視線で「早く言え」と促す。


「…仲間が死んでいくのが、怖い」


リヴァイは黙っていた。
先日もわたしの友人の一人が死んだ。その前の壁外調査でも。壁内に戻ってきたのは、どちらも彼女達のジャケットだけ。珍しくない事だ。ジャケットを回収してもらえるだけありがたい。
巨人なんか怖くないけど、わたしは仲間が死ぬのが怖い。
一人になっていく…。何も出来ない己の無能さをひしひしと感じる。

リヴァイはそんなわたしの頭をポンポンと撫でた。
優しく鋭い、愛しい瞳。この人はどうしてこんなに強いのだろう。


「兵士は、皆、死ぬ覚悟はできている。そしてそこに無駄な死はひとつも存在しない」

「…え」

「無駄な事なんてねえっつってんだ。現に今、お前は仲間の死を糧に、強くなっただろうが」


彼の言葉に、ポロリと涙が零れた。
リヴァイの言う通りだ。わたしはなんて不甲斐ないんだろう。こんな風に落ち込んでいたら、彼女達の死を無駄にしてしまうだけなのだ。


「そして俺にはお前が必要だ。…エルヴィンにもな。忘れるな」

「リヴァイ…」

「自分を見失うな」


カプチーノがふたつ、カチャンとテーブルに置かれた。


「…この世から、巨人がいなくなる日が来るのかな」

「俺を見くびるなよナマエ。まだこれからだ」


リヴァイの手が、テーブル越しにそっとわたしの頬に触れた。


「…うん」

「俺達は負けない。これからも進んでいく」

「うん……」


泣いてはダメだと思うのに、そう思えば思うほど涙が止まらない。


「お前は兵士になってから、よく泣くな」

「ごめん、なさい…」


リヴァイはふぅ、と息を吐いてカプチーノを口にした。


「悪くない」

「え?」

「ああ、今日はいい日だ」


その言葉の真意もわからぬまま、わたしもカプチーノを口にする。
さっきより、甘く感じた。

窓の外、空の向こうに、雲の切れ間が見える。


「雨が上がったら、笑って帰るね」

「ああ、お前は笑っていた方がいい」


リヴァイはわたしからスッと視線を反らし、椅子の背もたれに肘を置いた。


「醜くて…とても美しいな。この世界は」









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It's a wonderful world
/Mr.Children

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