パパと兵長とわたし
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ナマエにとって初めての壁外調査の日がやって来た。
ナマエはナナバの班だ。大丈夫だろうか。
「兵長、わたしは兵長の為に生き残ります!」
「巨人を見るのは初めてだろう。無理するなよ」
「やだぁ兵長…こんな人前でぇ」
何もじもじ照れてんだクソガキ。話が聞こえない兵士達が勘違いするだろうが!
「ナマエ」
「パパ!」
「本当に気を付けなさい。ああ、ナマエは可愛いから真っ先に巨人に狙われてしまいそうだ」
最近のエルヴィンはやたら気色悪くなってしまった。これも全部ナマエのせいだ。
「ナナバ、私のナマエを頼んだよ!」
「…はっ」
とりあえず敬礼をしたナナバの顔色からも「団長気色悪い」と言った様子が伺える。
そして壁外へ出た俺達は、ナマエの討伐能力に唖然とする。
バッサバッサと巨人のうなじを削いでいくナマエは、まるでミカサ・アッカーマンの姿を彷彿とさせた。ただミカサ・アッカーマンの脳裏からエレンの事を消し去ったような、つまりは冷静沈着な姿なのだ。
俺はナマエとは違う班なのでハッキリと見ている暇はなかったが、一瞬その姿を目撃しただけでも、卓越した技術は一目瞭然と言ったところだろうか。
その後無事に帰還したナマエをエルヴィンが抱き締める。
おいこら。…いやいや嫉妬とかじゃねぇからな。
「ナマエ、君は素晴らしいよ」
「ありがとうパパ!大好き!」
「なんだか照れるねぇ」
ヤ メ ロ
トリハダが立った俺はナマエをぶーぶー言わせながら部屋へ戻しエルヴィンと今回の調査についての報告をする。
しかしその間もエルヴィンの口からは「ナマエが」とか「ナマエは」とか、ナマエの話題は絶えない。
おいエルヴィン。どーしちまったんだ…人類が泣くぞ。現に今俺の心は泣いている。
…色々と誤解を招くと困るので先に言うが、エルヴィンがナマエの事ばかり話すので悔しいとか寂しいとか決してそんな事はねぇからな。脳裏に文字通りそんな腐った事を考えた奴、うなじ削いでやるから俺の前に出てこいクズ野郎。あ、野郎じゃねぇか。だったらクズ女子か?つーかそんな事は今マジどうでもいい。
…クソ。俺の思考はどうなっちまってるんだ。
「リヴァイ。確認したい事がある」
エルヴィンの表情が固くなった。仕事の話に戻ったのだろう。いやずっと仕事の話だったがな。
「ナマエに手は出していないだろうな」
「は?」
「答えろリヴァイ」
俺は何を真剣に聞かれているんだ…。
「ナマエがリヴァイと同じベッドで眠っていると恥じらいながら話していたが、どういう事だ」
あのクソガキ。本当に頭の中に脳ミソじゃなくクソが詰まってんじゃねーだろうな。
「ナマエは私の娘になった。この際交際は認めてやるが、早すぎるのではないか」
「…は?」
「セック」
「待てエルヴィン。落ち着け」
「これが落ち着いてもいられないんだリヴァイ。憲兵からもその事実を確認するよう命令が出ている」
ちょっと待て。そんな無駄な事に兵士の時間を費やすな。
いや、そうか…!憲兵の目的はこれだったのか。ナマエをエルヴィンの娘として、そして俺の恋人となるよう仕向けここへ寄越す事。恋人じゃねえがな。
そうすればナマエはスパイとして動きやすくなる。
「俺はナマエを女として見ちゃいねぇ。エルヴィン、気にするな」
「え、リヴァイ、君はまさか、ホ」
「ホモだ兵長!!」
「違ぇよ!っつーかなんでナマエがここにいる!」
「ハンジ分隊長に頼まれてこの書類をパパにお届けに来たの」
「ありがとうナマエ。そして君は聡明だ。的を射たいい質問だったよ」
「全然得てねぇよ!!」
もう勘弁してくれ…。