パパと兵長とわたし
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廊下を歩いてると、ナマエとリヴァイが二人で馬に乗っているのが見えた。
「おーい、どこ行くのー?」
と窓から声を掛けるとナマエが振り向いて
「デートに行ってきまーす」
と大声で返してくれた。リヴァイに拳骨を入れられて頭を押さえるナマエの代わりにリヴァイが振り向いて答える。
「立体起動の訓練だ」
廊下を通っていた他の兵士たちもその様子を見て口をあんぐり開けている。リヴァイ相手に怖いもの知らずな彼女の姿はとても新鮮だ。
「ハンジ分隊長!」
と横から私を呼んだのはリヴァイの班のペトラだった。ああ、そう言えば、
「憲兵団から左遷された彼女には負けません!」
彼女はリヴァイに憧れている兵士の一人だった。…これはちょっと面白い展開になったりして。
「でもペトラ、ナマエは左遷じゃ…」
「私にはそう見えるんです!そう思いたいんです!」
「えー…」
ちなみにナマエの存在は今朝兵士たちに伝えられた。本人の希望により憲兵団から調査兵団に配属された、という説明だったのだが「何を考えて内地からこんな危険な兵団に」と言うのが共通の感覚だ。
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足音の後にノックもなく扉が開いた。顔を上げるとにこにこと可愛いナマエがムスッとしたリヴァイと共に立っている。
「ごくろうだったね、リヴァイ」
「パパただいま!」
ナマエは当たり前のように私の所に掛けてきて抱き付いてくれる。
「てめぇは気安くエルヴィンに触るな」
と、いつものようにリヴァイに襟首を持たれて離れてしまうのだけど。
「エルヴィン、ナマエは問題ない。次回の調査から同行できる」
憲兵団所属であった事から、訓練兵時代に成績が良かったであろう事は私もリヴァイも憶測はしていた。ただ穏やかな内地で過ごしていた彼女の技術が衰えていないか不安ではあったのだが、リヴァイのこの言葉で安堵する。
「ナマエ、壁外調査に同行してもらえるかい?」
「はい!パパの望みなら!」
ナマエはキラキラと笑って敬礼をした。
「ではナマエは…そうだね、ナナバの班に入ってもらおうかな」
「バナナさん?」
「ナナバだよ」
と笑うと、リヴァイがイライラした様子を見せ舌打ちをした。このぽわぽわした空気が気に入らないんだろう。
「ねぇパパ、わたしにも何かお仕事ないかなぁ」
ナマエが小さな声で言った。
「兵長のお部屋の掃除もちゃんとするから」
とナマエが上目使いで私を見る。可愛いなぁ…どうしてナイルはこんな可愛い子を手放したのだろう。と言うか掃除とはどういう事だ?ナマエはリヴァイの部屋を掃除してるのか?つまりメイド扱いか?よもやメイドの格好などさせているのではないだろうな!?けしからんぞリヴァイ!
「エルヴィン」
脳内がパニックを起こしているとリヴァイに名を呼ばれた。顔を上げると彼は至って真面目な顔をしていた。
「エルヴィン、ナマエに部屋をやってくれ。監視は怠らん」
「え、兵長どうしてですか!」
ナマエがリヴァイの袖を掴む。二人で話し合った答えでは無さそうだ。
「同じ部屋でいいじゃないですか!まさか兵長、わたしに飽きたんですか!」
「何言ってんだクソガキが」
「だったらなんで急にそんな事言うんですか!酷い兵長!」
「なんでもクソもあるか、お前がガキだから我慢してやってたんだ。お前が大人だってんならもう一緒にいる訳にいかねぇだろが」
「え」
どういう事だリヴァイ…君はもしかしてロリ
「ロリコンだ兵長!」
さすがはナマエだ、的を射たいい質問だ。
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結局ロリコン疑惑を与えられたおかげでムキになった俺は、今まで通りナマエと同室で了解した。
正直言うと、ソファーで寝るのは身体が痛むし慣れてきたクソガキと同じベッドでも構わないかと思っていた矢先だったのだが、ナマエが大人だと判明してしまった今、さすがに一緒に寝る訳にはいかないと判断する。
「兵長、わたしソファーで寝ます」
「なにガラにもねぇ事言ってんだ、胸クソ悪ぃ」
「じゃあわたしも一緒にソファーで寝ます!」
「バカか」
ため息をつきながらソファーに腰掛けると、目の前に紅茶の入ったカップが置かれた。
「今日は訓練していただいて、ありがとうございました」
「お前の適性を見ただけだ」
と遠慮なくカップに手を伸ばす。
「兵長と過ごす時間は、どれも楽しいです」
「それは良かったな」
「なので結婚してください」
は?
「わたし、改めて兵長が好きになりました」