パパと兵長とわたし
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ナマエがやって来て一週間が経った頃、私にはどぉーしても押さえられない探求心もとい疑問があった。ナマエはどこで眠ってるのか!自室を与えられたとは聞いていないし日中はリヴァイの部屋で過ごしているのは知ってる。…夜は?と言う訳で、これは行動に移すしかないよね!
夜7時、リヴァイがエルヴィンの部屋に向かったのを確認してリヴァイの部屋へ向かう。
「分隊長!会いたかったですー!」
と床掃除をしているナマエが満面の笑みを向けてくれた。掃除中の為か憲兵団のジャケットは脱いでいる。
「わたし、巨人のお話を聞かせていただきたいのですが…!」
との言葉に、もうスパイとかどうでもいいやとナマエを研究室へ連れ出した。
「兵長ったらわたしを監禁して離してくれないんです〜いくら愛する人にでもそれってDVってやつですよね!ドメスティックバイオレンスっ!…えへへ、まぁ嫌いじゃないんですけど」
あ、やっぱりちょっと怖いなこの子。
「分隊長って巨人について詳しいんですよね?じゃあ、イェーガーは?」
「え?エレン?」
「彼の巨人化についても詳しいんですよね?」
「え、まぁ」
「やっぱり分隊長って素敵〜!」
なんだか踊らされてる気もするけど!と、私はイェーガーの巨人化についてや巨人の生態についてありとあらゆる事をナマエに語って聞かせた。
…かったのだけど、結局それは鬼の形相で現われたリヴァイによって中断された。
「おいハンジ、これはどー言う事だ。何でナマエがここにいる。何でお前はベラベラと喋っている」
「いやぁ、ナマエが巨人の事を知りたいって言うから」
「兵長ったらわたしが部屋にいなくて寂しくて探しに来てくれたんですか!」
「違う」
ナマエはリヴァイに腕を捕まれてズルズルと研究室から出ていった。あーあ、まだ序章だったのに。
あ!ナマエがどこで眠ってるのか聞くの忘れちゃった!
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ナマエが「兵長、ちょっと痛いですぅ」と顔を真っ赤にするので俺はまた強く腕を掴んでしまった事に反省してその手を離した。ナマエは腕を擦りながら「こう言う時は、はい」とまた俺の指に自分の指を絡める。
「一体なんなんだこれは」
「恋人なら恋人繋ぎをしないと」
「いつから俺とお前は恋人になったんだ」
「わたしが兵長をひと目見た時からです!」
「俺はそんなつもりはない」
「まぁ固い事言わずに」
ナマエは絡めた指を見て満足そうに笑う。…ダメだこいつ。
「あ、兵長」
「なんだ」
「わたしそろそろパパの所に行かないと」
こいつは自分の立場がわかっちゃいねぇ。
「いい加減にしろよクソガキ。お前は牢に入れられてもおかしくないんだ。そんな簡単に諜報活動を進められると思うなよ」
「チョウホウ?なんですかそれ?」
「とにかくエルヴィンに会う事は許さん」
「昨日からあってないんですー」
「一昨日は会ってたのか」
部屋から出るなと言っておいたはずなのにこいつは全然わかっちゃいねぇ。へらへらと笑うたびに苛つく気持ちをなんとか押さえながら、取り合えずいい機会だとエルヴィンの部屋へ足を運ぶ。
「リヴァイ、ナマエを連れてきてくれたのかい」
「いや…」
「パパー!」
「よしよし」
ハグするナマエの頭を撫でるエルヴィン。…お前は本当にエルヴィンか。
「それでエルヴィン、結局こいつの処遇はどうするんだ」
「その事だがね」
とエルヴィンは兵服のジャケットを取り出した。そのエンブレムには翼があしらわれている。
「は?」
「今日から君は調査兵団だ」
「わぁ!」
いやいや、こいつは憲兵から来てるスパイだぞ。なに考えてやがる。ナマエはジャケットをバサリと羽織り嬉しそうに笑う。
「ねぇパパ、似合う?」
「ああ、似合ってるよ。とても可愛い」
「素敵なパパの娘だもの〜」
なんだこいつら。
「と言うわけだ。頼むよリヴァイ」
「は?」
「問題無いとは思うが、ナマエの調査兵としての適性を見てやってくれ」
さっきから開いた口が塞がらない。一体エルヴィンの野郎は何考えてやがるんだ。
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部屋に戻ったナマエはジャケットを脱いでその翼をまじまじと見つめている。
「かっこいいなぁ調査兵団!」
「…お前、調査兵団に憧れてたのか」
「だってパパの率いてる兵団だもの。今は愛しい彼もいるし」
とポッと頬を染めるナマエ。
まさか俺の事じゃねぇだろうな、ガキが色気付きやがって。
軽く舌打ちをして、俺は机に向かう。ナマエはポスンとソファーに腰掛けて嬉しそうに何やら独り言を言って盛り上がっている。おめでたい脳ミソだ。
「兵長!これでわたしも皆さんの仲間入りですね!」
「どーだかな」
俺はまだこのクソガキを信用してねぇ。
「なんでいつも怖い顔してるんです?」
「放っておけ、元からだ」
「んもー連れないなぁ。そこがまた素敵です兵長」
と、言ったきり静かになったので、俺は仕事を始めた。
しばらくたって、ナマエがソファーで眠りこけているのに気付いた。とりあえず風邪なんか引いてもらっちゃまずいと毛布をナマエにかける。心配じゃねぇ、俺に移されちゃ困るからだ。しかしその後も一向に目覚める気配はない。俺はナマエをベッドに移そうとその体を抱えあげた。…抱えて気付いたが、割りとしっかり筋肉が付いている。憲兵の兵士にしてはきちんと訓練をしていたのだろうか。
「ん…」
「起こしたか」
起きたなら気を遣う必要もない。とナマエをベッドに放り投げた。
「な、なんですか兵長!強引な…!」
「ソファーを開けただけだ、気にするな」
ナマエがこの部屋に来てから、ナマエにベッドを使わせ俺はソファーで眠っていた。
「…ねぇ兵長」
「なんだ」
「一緒に寝ましょうよ」
「断る」
「…そう言えば兵長の気持ち聞いた事なかったんですけど…好きな人とかいるんですか?」
「あ?」
むしろ今更な問いに唖然とするが、そもそも俺とお前はそんな関係じゃないからな。
「大体お前まだガキだろ」
と言うとナマエはガバッと体を起こした。
「わたしこれでもはたちですよ、二十歳!」
「…は?」
「よく若く見られちゃうんですけど、もう恋愛どころか結婚もバッチリです!え、もしかして兵長大人の女には興味がないとか…」
「少し黙れ」
どう見ても二十歳になんか見えなかった。外見も脳みそも完璧なクソガキだ。
「わたしは本気です兵長!」
「わかったからそのまま寝ろ」
「とりあえず着替えるのでこっち見ないでくださいね」
「見るかクズ」
本当に厄介な事になったな、とため息をついた。