long/温かな光
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ストヘス区で、わたしはハンジの隣にいた。
女型の巨人が現れるのを捕獲装置を構えながら待っているのだ。
「ねぇハンジ」
「なんだい?」
やけに目を泳がせているハンジがわたしを見た。
「本当に、アニが女型の巨人なのかな…」
「エルヴィン達がそういう判断に賭けたなら、私たちは信じるしかないよ」
「でも…」
「ナマエは相変わらずのお姫様っぷりだねぇ」
「え」
「まだわからないのかい?女型の巨人が何をしたのか」
――そんな事、わかってる。
「どれだけの人を殺したのか」
――わかってるの。
「ナマエ、君はあまりにも世間知らずだ」
「…わかってるよ」
「いや、わかってないね。わかってないから、今ここにいるんだ」
「それは、わたしが兵士を志願した事を否定してるの?」
「そうとも言えるね」
わたし達の空気に挟まれて、モブリットがそわそわしている。
「君が兵士に向いていないと言うつもりはないよ。むしろ適性としては向いているんだろうね。でも君は、エルヴィンの大切な存在であり、かつリヴァイの恋人だ」
「…ハンジ、あなたがそんな事言うなんて」
「私たちは人間だ。本来生物の目的は生きて子孫を残す事。人類のその目的の為に、我々調査兵団は生きていく事を放棄してるようなものだ。…君にはそんな生き方が似合わないんだよ、ナマエ」
「………」
「君は、エルヴィンとリヴァイを、優しく待っている存在で良かったんだ」
ハンジ。
それじゃわたしは、何の為に――
“お前がいる事で、誰かが生きる光を見出だせたとしよう”
“だから今のままで構わないんだ、ナマエ”
「…!!」
その言葉は、いつか未来に迷うわたしにリヴァイがくれた言葉。
それを結果無視して、わたしはここにいる。
今リヴァイはどんな気持ちなんだろう。
今まで、どんな気持ちでいたのだろう。
「ハンジ…」
「だけど前に進むしかないんだ。君はここにいる。だから次に君が成すべき事は、」
「生きて、帰る…」
ハンジは微笑んで、くしゃりとわたしの頭を撫でてくれた。