long/温かな光
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エルヴィン団長とリヴァイは不在だ。そしてハンジも何やら用事があるらしく、それにわたしも同行していい、との事だった。
地下室、とやらに行くのだろう。それがハンジの判断だと知っているわたしは、勝手な行動をリヴァイに怒られやしないかと内心不安だった。
そしてもう一人、同行者がいた。分隊長のミケ・ザカリアスだ。正直言ってわたしはあまりこの人が得意ではなかった。
変人の集まる調査兵団において、ミケは癖こそ変人そのものだが、その思考は正常なのだ。彼はいつも正論を言う。それが変人達にとっては否定的意見となる。
「久し振りだな、ナマエ」
「ひゃ、やめて!初対面じゃないんだから!」
首筋に鼻を近付けられ、思わずその体を突き放す。
「すまんな、つい」
「そ、それ以上近付いたら、リヴァイに言い付けるんだからね!」
子ども染みた言葉にハンジが笑っている。わたしはミケに匂いを嗅がれるのが大嫌いだ。そうやって全てを見通してしまうんだから。
「そうだったな。リヴァイと交際してるんだった」
「白々しいな、もう」
「そう嫌うな。俺はお前が嫌いではない」
「別にミケを嫌ってるわけじゃ…」
まったく、とミケに背中を向けた途端、首筋に鼻が近付いた。
「ひゃっ!」
「リヴァイの匂いがしないな」
だから嫌い。なにもかもお見通し。
「…リヴァイは忙しくて、部屋に帰ってこないの。帰ってきてもソファーで仮眠ばっかりでベッドで寝ないし」
「そうか」
ミケはポンポンとわたしの頭を撫でる。
そうやってわたしの寂しさまで見抜いてしまうミケが、わたしはやっぱり大嫌いだ。
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「え、ここって」
「そう。審議所だよ」
3人で到着したのは審議所だった。
ハンジが嬉しそうに足を速める。どうして嬉しそうなのか、その地下室への階段を降りながら思考を巡らせる。
「ねぇハンジ、この先に、…巨人が、いるの?」
「ん?怖いの?ナマエ」
ハンジは微笑んで「大丈夫だよ」と頭を撫でてくれた。
コツコツとブーツの音が響く。
「え!?」
絶句してしまった。
地下牢に入れられ、枷をつけられているその人は、
「エレン!!」
紛れもなく私の友人だった。
「ナマエ?」
檻の向こうでエレンが驚いている。驚くのはわたしだよ。どうしてエレンが、牢に?
「ハンジ、これは一体…!」
「詳しい事は、これからわかるから」
ハンジとミケはエレンを牢から出し、その腕を背後に回させ再度枷をする。
審議室へ向かう間、ハンジがずっとエレンに話し掛けているが、わたしはそれを理解出来ずにいた。混乱していたのだ。
巨人と、トロスト区と、エレン。全然繋がらない。
不意にミケの鼻が首筋を掠めた。
「ひゃ!……もう、なにするのよ!」
「ちゃんと前を見ないとぶつかるぞ」
「だからってどうして嗅ぐの」
「ナマエは首筋が弱いとリヴァイが言っていた」
「………!!」
訂正する。ミケも変人だ。
やっぱり調査兵団は、変人の巣窟なのだ。