long/温かな光

□3-3
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壁で何が起こっていたのか、わたしにはわかる筈もなかった。
風の噂で、巨人がわたし達人類に力を貸してくれたと聞いたが…信じられる訳がない。

そして壁外から帰ってきた団長とリヴァイは、今まで以上に忙しくなった様子だった。


「ナマエ?」

「え?きゃ!」


紅茶がカップから溢れている。ハンジが「表面張力の研究かと思ったよー」なんて笑っている。
ハンジも知っているのだろうか。今何が起こっているのか。
溢れた紅茶をタオルで拭きながら、わたしはハンジに尋ねた。


「ねぇハンジ…」

「どうしたの?そんな深刻そうな顔して。ほらスマイル、スマイル!」

「…ハンジは知ってるの?トロスト区を奪還できた詳しい経緯」


わたしの言葉に、ハンジは一瞬固まった。…知っているようだ。そうだ、知らない訳がない。


「巨人が味方してくれたって聞いた。そんな事あるの?」

「うーん…ナマエはまだ知らない方がいいんじゃないかなぁ。それよりもっと大事な話があるんだけど!」

「…なぁに?」

「生け捕りにした巨人なんだけどね、名前、ソニーにしようと思うんだ!もう一体の名前は…」

「もう、ハンジったら。名前なんて付けてどうするの。4m級と7m級でいいじゃない」

「ビーン…よし、ビーンにしよう!」

「まったく」


わからない事は多いけど、わたしなんかが知る必要もないのかもしれない。そう考えて、わたしはハンジと共にソニーとビーンの研究を始めるのだった。

この研究に必要不可欠だったのがモブリットの存在だ。彼はハンジが行き過ぎる行動をとるとすぐにハンジを守り叱咤してくれた。


「ナマエさんからも言って下さいよー」


それが彼のわたしに対する口癖だ。


「ハンジはわたしの意見なんか聞きもしないよ」


と困ってしまうのがわたしの反応。これも毎回の事だった。

4m級の方の巨人(わたしにはどっちがソニーでどっちがビーンか、そんな事は興味がないのだ)を見ながら、わたしが子どもの頃に
屋敷を襲った巨人を思い出してみる。あれは3m級だったと思う。
巨人がもっともっと大きくて恐ろしい存在だった気がするのは、わたしが小さかったからだろうか。

あの巨人は間違いなく敵だった。いや、巨人はみんな敵だ。味方になるなど有り得ない。


「ねぇナマエ、ナマエはどう思う?」

「え?あー…ごめんなさいハンジ。聞いてなかった」

「どうしたのナマエ。最近考え込んでたりするけど、なんかあったの?」

「ううん、大丈夫」

「もしかして、味方になった巨人の事?」


わたしなんかがそんな重大な事を知る必要はない。わたしはわたしの任務を遂行するだけ。そんな風に考えてる筈なのに、やっぱりなぜか気になってしまうのだ。


「一緒に地下室に行こうか」

「え?」

「ま、どっちみちその辺りも研究しなきゃいけないし、いつかはナマエにも知ってもらわなきゃならないしね」


とハンジはウインクした。
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