long/温かな光
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いつものように夕食をとりに入った食堂で、久し振りに俺らの前に現れたナマエは、とても楽しそうに満面の笑みを浮かべていた。
「エレンとミカサ!見ぃつけた!」
まるで酔っぱらっているんじゃないかと思うほどに。
「どーしたんだよナマエ…なんかいい事でもあったのか?」
若干引いてしまった俺とミカサは、ナマエの次の言葉に耳を疑った。
「わたし兵士になるの!半年後の壁外調査から、外に出るんだよ!」
まるで欲しくてたまらなかったおもちゃを得た子どものようにナマエははしゃいだ。
夕食を机に置いて、ナマエは俺たちの正面に座った。
「毎日訓練と仕事に追われてるけど、はぁ幸せ〜」
「でも、何で突然…」
「ずっとゴネてたからかな、リヴァイにも団長にも。これから本当に仲間だね、一緒に頑張ろーね」
えへへ、と笑いながら、ナマエはサラダを口にする。
確かにナマエが度々訓練をしていたのは知っているけど、まさか半年後から壁外調査に加わるとは。
しかも直談判するなんて。
直談判する勇気も、それに応じてもらえる力を持っている事にも驚く。
「今度、訓練兵の座学の授業に参加させてもらおうかなー」
「そう言えばさぁナマエ、リヴァイ兵長ってどんな人なんだ?」
一人で一個旅団並の兵力…と聞けば、気にならないわけがない。リヴァイ兵長は兵士の憧れなのだ。
ナマエはそんな兵長の恋人であり、パッと見正反対のようにも見えるその二人が恋仲だと言う事実に驚くものの、否定はしない。
(兵長は、ナマエの穏やかで柔らかいところに、惹かれたんだろうな)
と想像してみる。
「リヴァイはとっても優しいよ。みんなにはそう見えないかもしれないけど、すごく大事にしてくれるし」
「それはナマエだからだろ」
「え」
「ナマエにだから、優しくなれるんだろ。なぁミカサ」
「わからなくはない」
「やだなぁー」なんて照れながらパンを口にするナマエを見ながら、支え合いたい仲間がまた一人増えた事に気を引き締めつつ…それがナマエである事に苦しみを覚えるのだった。
(どうか、ナマエが幸せに、笑っていられますように)
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「やっほー、ジャン!」
「ナマエ!」
久し振りに目の前に現れたナマエは、心なしか体格が変わっているような気がした。
「あのね、半年後からわたしも壁外調査に行くんだよ」
恐ろしい事を口走っているのに、当の本人は嬉しそうな顔をしている。
…相変わらずよくわからねぇ女だ。
「壁外って、なんで」
「巨人を討伐するの!」
「は?」
「兵士になるんだってば!今猛特訓中だよ」
「なんでわざわざ、お前っ…」
あぁ、体格が変わったと思ったのは気のせいじゃなかったんだな、と考える。
だけどなんで。なんで恐ろしい壁の外へ。
「これで本当にみんなの力になれるね」
ナマエはそう言うが、俺はナマエには壁の外へなんか出てほしくなかった。万が一、ナマエが巨人に―
「もし同じ班になる事があったら、よろしくね」
「ナマエ、今からでもやめろよ。わざわざ兵士になるなんざ馬鹿げてる」
「わたしが巨人のエサになると思ってるんでしょ」
「い、ゃ…」
「わたし頑張ってるんだから、ジャンもちゃんと応援してね。わたしもジャン応援してるんだから」
と微笑まれれば、その雰囲気に飲み込まれてしまう。
「…絶対、無理すんじゃねぇぞ」
「うん。ありがとう!」
とりあえず報告に来たらしい。眩しいほどの笑顔を振り撒きながら、ナマエは手を振り帰っていった。
なんて事だ。ナマエが兵士になるなんて。
例えばナマエが凄まじい能力の持ち主だとしても、…例えばその力のお陰で人類が救われる事があるとしても、それでも俺は、危険の伴う兵士になんて正直なってほしくはなかった。
俺は天を仰ぎながら、少しでも彼女を守る事に繋がるのならと、明日からの訓練に更に力を注ごうと誓ったのだった。