long/温かな光
□3-1
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地を滑るように影が走り、わたしは頭上を見上げた。一羽の鳥が飛んでいく。
真っ青な空に、綿のような雲がぽかぽか浮かぶ、穏やかな日和。
「おいナマエ、なにボサッとしてやがる。やる気がねぇなら…」
「ご、ごめんなさい!今行く!」
彼の元へ急げば、ぽんぽんと頭を撫でられる。
「ハンジの野郎がどこまで教えたか、見せてもらおう」
「うん!」
わたしはふぅ、と息を吐いて、事実上初めて、リヴァイの前で立体起動を行った。
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「おいクソメガネ」
「あいたたた、なんだいリヴァイ」
突然飛んできた足に尻を蹴られ、尻をさすりながらハンジは振り向いた。
「てめーどういう教育してたらナマエがあんなになるんだ」
リヴァイが何を言ってるか訳がわからず、ハンジは首をかしげた。
思い当たる節は、報告書の事か、立体起動の事か…はたまた、
「もしかしてナマエが巨人の生体に興味を持ち出した事!?」
「持ってねーよ。立体起動の事だ」
答えは期待を裏切った。いや、予想通りではあったが。
「あ、そう言えば今日からナマエの立体起動の訓練、リヴァイが担当するんだってね」
ハンジはナマエが「リヴァイが認めてくれた」と嬉しそうに語っていた事を思い出した。
「そのつもりだったが、必要ねーだろ」
「?」
「あとは体力さえつけりゃなんとかなる」
「ナマエの努力は凄まじかったからねぇ。いやぁ、師匠として私も鼻が高いよ!はっはっは」
「…まぁ、応用訓練としてやる事は山ほどあるがな」
「あの子は機転が利くんだよ!頭で考えている事をきちんと感覚に変換できるんだ。最初から訓練を受けさせていたら、今頃すごい兵士だったかもしれないよ」
「………」
「リヴァイ?」
「いや。…いつ、あいつを壁外調査に加えたらいいかと思ってな」
リヴァイは視線を床に落とした。
「……ついにあいつ、壁の外に行くのか」
小さな声は悲しいほど狂おしくて、ハンジはリヴァイの苦悩を改めて思い知らされた。
「リヴァイ、せめて彼女が無事に戻れるように、強い兵士に育てよう」
「もう、それしかねぇんだな…」