long/温かな光

□2-11
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その日、帰ってきたナマエに「後で話がある」と言い、俺は読書を始めた。
ナマエは訝しげな表情を見せ、シャワーへ向かった。

10分程でナマエは濡れた髪を拭きながら現れた。「時間が欲しいから、手短にね」と言って。


「ナマエ」

「はい」

「…いや、待て」


口を開いた途端、何から話したら良いのか頭の中がごちゃごちゃになった。
見かねたナマエが口を開く。


「…立体起動の訓練の事?」

「それもあるが、その前に」

「……なに?」

「外に、出たいのか。壁の外に」

「出たいよ。兵士になりたい」

「どうしてだ」

「必要とされたいの」

「誰にだ」

「みんなに!」

「俺もエルヴィンも、お前を巨人の前に送りたくはない」

「だから訓練するの。巨人に負けない兵士になる」

「話を変える」

「………」

「解放されたいか」

「え?」

「俺から離れて、エルヴィンのところに行くか」


それは、巨人から守る為に言った言葉ではなかった。巨人から守る為の言葉ならどれだけ良かっただろう。
もしかしたら、諦めや嫉妬に似た言葉だったのかもしれない…ナマエにはもう、自分への想いがないのではないかと。


「わたしは、ここに、いたい」


ナマエの声が震える。


「いたら…ダメ、ですか」


追い出されると思っているのだろうか。
…そうだ。きっとエルヴィンの部屋を出てここへ来た時も同じ想いだったはずだ。
だからか。


「別にお前を見放す訳じゃねぇ。ただ、どうしたらお前の気が晴れるのか…俺にはわからない」

「どういう事?」

「エルヴィンのところに行けばいい。奴ならお前を守れる」

「わたしは、リヴァイの傍にいたいって言ってるの」

「だったら、」

「お願いリヴァイ。きちんと話がしたい」


ナマエはすっと席を立つと、紅茶を淹れ始めた。


「わたしはリヴァイの隣にいたい」

「なぜだ」

「…好きだからに、決まってる」

「俺は好きな女に、巨人のところに向かってほしくねぇ」

「じゃあわたしはずっと役立たずのままなの?」

「ここにお前がいればそれでいい。俺は言った筈だ、お前がいる事で俺が生きる光を見出だせたと…それだけじゃダメなのか」

「だ、だって、わたし…」


体を震えさせながら、ナマエは続けた。


「わたし、汚くて――」


俺は咄嗟にナマエの手を掴み、ナマエを隣室のベッドに放り込んでいた。
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