long/温かな光
□2-10
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目が覚めて、朝日に照らされる見知った天井を見つめながら、己の未熟さに涙が溢れた。
みんなにワガママばかりだ。
「起きたか、ナマエ」
リヴァイの声が聞こえた。
涙を溢したまま彼を見る。彼は着替えを済ませ、まさに今部屋を出ていこうとしていた。
「…昨日は、悪かった」
「うん。大丈夫……」
わたしの声は掠れていた。
「大丈夫か?」
そっと近付くリヴァイ。なぜだか、今は怖くない。
「エルヴィンは、お前を心配していた。勝手に連れてきたのは俺だ。奴を恨むな」
「…優しいんだね、リヴァイ」
「とにかく、今日は休んでろ。エルヴィンも休めと言っていた」
「わかった。ありがとう」
ぐずぐずと涙を止められないわたしの傍にティッシュを置き、わたしの頭をそっと撫でて、リヴァイは部屋を出ていった。
自分がどうしようもなく愚かな人間に思えた。
もしもわたしが兵士になる訓練を受けていて、死に物狂いでそれをクリアしていたなら、あんな事で、わたしは平常心を失ったりしなかったのではないだろうか。
そう考えれば考えるほど、わたしは兵士に対する憧れを増していく。
と同時に、今の弱い自分が嫌いになる。
退団したいと思ったのも、逃げ出したいと思ったのも…きっとわたしの精神力の弱さが原因だ。
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「ねぇ、ハンジ」
「ん?え、ナマエ…それ…」
「もうハンジにしか頼めないの。わたしを兵士にして」
わたしは立体起動装置を身に付けて、ハンジの前に立った。
「ナマエ、みんなの役に立ちたいっていう君の気持ちはわかるけど…」
「だったら話が早いね、よろしくお願いします」
「いやいや…うーん、参ったなぁ」
頭をボリボリとかきながら、ハンジは考え込んでいる。
「ハンジが教えてくれないならいい。独学で頑張るから」
「いや、それは危険だよ!」
「じゃあ教えて」
「リヴァイはそれを、」
「彼に言ったら止められるに決まってる。だからハンジにお願いしてるの」
「だけど勝手にナマエに立体起動を教えたらリヴァイに怒られるよー」なんてぶつくさ言いながら、ハンジはウロウロと研究室内を歩き回っている。
「……もういい」
わたしは研究室を後にして、近くの林へ入った。
そこは立体起動の訓練の為の場所で、以前リヴァイに止められるまで、何度か訓練した事のある場所だ。
わたしは装備に不備がないか確認して、跳んだ。
蒸かすガスの量、アンカーを打つタイミング…研究に基づく行動を取ろうと、頭の中をフル回転させながら、必死に体にこの感覚を叩き込んでいく。
もちろん反省点は多い。タイムは遅いくせに、ガスを蒸かしすぎている。アンカーを打つタイミングもまだまだだ。何度木々にぶつかりそうになった事か。
この状態でブレードも扱わなければ巨人を仕留められない。しかも巨人を仕留めるには、うなじへの攻撃しかない。
先が思いやられた。
(だけど、わたしは負けていられない)
「ナマエ!」
「!」
名前を呼ばれて、わたしは地面に降り走った。
そこには、立体起動装置を身につけたハンジの姿。
「立体起動は、計算では扱えないよ。…さぁ、私が教える通りに動いて」
「ありがとう、ハンジ!」
目の前に光が差した気がした。
ハンジに習いながら、木々の間を跳んでいく。
「ナマエ、立体起動装置の扱いだけじゃなく、体力をつける事も肝心だよ」
「…わかった!」
そうして、その日からハンジとの訓練が始まった。