long/温かな光
□2-6
2ページ/2ページ
わたしは安心してその日を迎える事ができた。
リヴァイが、心なしか穏やかな表情で馬車に乗るわたしを見つめてくれる。
「行ってくるね、リヴァイ」
「あぁ、気を付けてな。エルヴィン、ナマエを頼んだぞ」
「任せてくれ」
そうして、馬車は出発した。
慣れない振動が心地よく感じるのは、王都への憧れからだろうか。
「用事はすぐ済む。その後は、少しだけ街を見て回ろう」
「わぁ!」
「何か欲しいものが見つかったら、買ってあげよう。ご褒美だ」
「もぅ団長ったら…わたしは子どもじゃありません!ちゃんとお金も持ってきてます」
「ふ、そうだな。ダメだな私は…いつまでたっても、君が大事だ」
エルヴィン団長の意図は読めない。にもかかわらず、その半ば気障な台詞にドキリとしてしまった。
「か、からかうのはやめて下さい…わたしの事、リヴァイに託したのは団長じゃないですか」
どうしてこんな会話になってしまうんだろう。
過去の事はもういい。むしろ今のわたしにはリヴァイがいる。過去の色恋事など、話したくも聞きたくもないのに。
「私に君は美しすぎたんだよ」
「なにを…」
「君を手元に置いておく訳にはいかなくなったんだ。…君を、愛してしまったからね」
耳を疑った。
ふふ、とエルヴィン団長は笑う。
冗談のつもりなのか、大人のジョークなのか…(あれ、一緒かなぁ)
とにかく、わたしは突然の言葉に身体中が熱くなってしまった。
「だけど予想外だったのは、リヴァイが君を気に入ってしまった事だよ」
「………」
「それに、君も…リヴァイを愛してしまった」
団長の手が、ふわりとわたしの手に重なった。
恥ずかしくて顔をあげられない。
心臓の音が団長に聞こえてしまわないか怖くなる。
「君はずっと、私を想ってくれていると信じていたんだがね」
「だ、団長、やめてください…。今のわたしには、リヴァイが」
「手を握るくらい、いいじゃないか」
これが大人の色気なのだろうか。
負けてしまう。
「そ、それに、わたしを突き放すようにしたのは団長じゃないですか…わたしは、団長をお慕いしていたのに」
「……そうだな、」
団長はどんな想いでわたしをリヴァイに託したのだろう。
「それはそうと、ナマエ」
「あ、はい」
「ボタンは一番上まで止めた方がいい」
「?…あ、でも苦しくて」
「見えているよ」
とエルヴィンがわたしの鎖骨をなぞった。
ぞくりとした感覚に、体がビクンと跳ねた。
そこでやっと、キスマークがついている事に気付く。
「わざとだろうな、リヴァイの奴なら」
「もう、まったく…」
わたしはいそいそとボタンを止める。
息苦しい。
「しかしナマエの反応はやはりそそられるな」
「っ団長、もう、やめてください…っ」
面白がるように、団長は声をあげて笑った。