long/温かな光

□2-6
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わたしは安心してその日を迎える事ができた。
リヴァイが、心なしか穏やかな表情で馬車に乗るわたしを見つめてくれる。


「行ってくるね、リヴァイ」

「あぁ、気を付けてな。エルヴィン、ナマエを頼んだぞ」

「任せてくれ」


そうして、馬車は出発した。
慣れない振動が心地よく感じるのは、王都への憧れからだろうか。


「用事はすぐ済む。その後は、少しだけ街を見て回ろう」

「わぁ!」

「何か欲しいものが見つかったら、買ってあげよう。ご褒美だ」

「もぅ団長ったら…わたしは子どもじゃありません!ちゃんとお金も持ってきてます」

「ふ、そうだな。ダメだな私は…いつまでたっても、君が大事だ」


エルヴィン団長の意図は読めない。にもかかわらず、その半ば気障な台詞にドキリとしてしまった。


「か、からかうのはやめて下さい…わたしの事、リヴァイに託したのは団長じゃないですか」


どうしてこんな会話になってしまうんだろう。
過去の事はもういい。むしろ今のわたしにはリヴァイがいる。過去の色恋事など、話したくも聞きたくもないのに。


「私に君は美しすぎたんだよ」

「なにを…」

「君を手元に置いておく訳にはいかなくなったんだ。…君を、愛してしまったからね」


耳を疑った。
ふふ、とエルヴィン団長は笑う。
冗談のつもりなのか、大人のジョークなのか…(あれ、一緒かなぁ)
とにかく、わたしは突然の言葉に身体中が熱くなってしまった。


「だけど予想外だったのは、リヴァイが君を気に入ってしまった事だよ」

「………」

「それに、君も…リヴァイを愛してしまった」


団長の手が、ふわりとわたしの手に重なった。
恥ずかしくて顔をあげられない。
心臓の音が団長に聞こえてしまわないか怖くなる。


「君はずっと、私を想ってくれていると信じていたんだがね」

「だ、団長、やめてください…。今のわたしには、リヴァイが」

「手を握るくらい、いいじゃないか」


これが大人の色気なのだろうか。
負けてしまう。


「そ、それに、わたしを突き放すようにしたのは団長じゃないですか…わたしは、団長をお慕いしていたのに」

「……そうだな、」


団長はどんな想いでわたしをリヴァイに託したのだろう。


「それはそうと、ナマエ」

「あ、はい」

「ボタンは一番上まで止めた方がいい」

「?…あ、でも苦しくて」

「見えているよ」


とエルヴィンがわたしの鎖骨をなぞった。
ぞくりとした感覚に、体がビクンと跳ねた。
そこでやっと、キスマークがついている事に気付く。


「わざとだろうな、リヴァイの奴なら」

「もう、まったく…」


わたしはいそいそとボタンを止める。
息苦しい。


「しかしナマエの反応はやはりそそられるな」

「っ団長、もう、やめてください…っ」


面白がるように、団長は声をあげて笑った。
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