long/温かな光

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エルヴィン団長が、王都に行く為の秘書に、わたしを選んで下さった。
新しい秘書もいるのだが、まだ仕事が覚えきれず、長く団長の傍で仕事をしていたわたしが選ばれたのだ。

しかしこれに異論を唱えたのが、兵長様だった。


「エルヴィン、ナマエは俺の部下だ。勝手に連れて行かれちゃ困る」

「君は私が言った事をナマエに行っていないだろう。彼女の不満を解消する為にも、一度王都へ連れて行ってやりたい」

「そりゃお前の悪意ある趣味じゃねぇだろうな」

「どういう意味だ」

「ナマエに手を出すなよ」

「ははは、だったらナマエを早く兵士にしたまえ。私はナマエの笑顔が見たいだけだよ」

「…チッ」


わたしの知らないところで二人がそんな会話をしている事も知らず…わたしは仕事と言えど初めて訪れる事になる王都に憧れを抱き、荷物をまとめていた。
…夢のようだ。わたしなんかが王都に行けるなど。

リヴァイは時々、王都へ行っていろんなお土産を買ってきてくれる。その細工の素晴らしさに、王都への憧れは募る一方だったのだ。


「ナマエ、何してる」


ノックも無しに入ってくるのは、この部屋が二人の部屋だからだ。


「王都に行く準備をしてるの。明後日からなんだけど、楽しみで…。ねぇリヴァイ、お土産はなにがいい?」

「ナマエ、仕事だって事、忘れるなよ」

「もちろん!」


と言いながら、つい鼻唄が出てしまう。あぁ、王都ってどんなところなんだろう。


「ちなみに、ナマエ」

「ん?なぁに?」


忘れ物がないかチェックをしながら、リヴァイの方は見ずに返事をした。


「お前が思ってるほど、王都は素晴らしいとこじゃないかもしれんぞ」

「どういう意味?だってリヴァイがいつも買ってきてくれるお土産、素敵なものばかりじゃない。あんな素敵なものが生産されてるところだもの、きっと素敵に決まってる」

「お前は相変わらず、お花畑だな」

「よし、大方、準備オッケーかな」


そうしてわたしは立ち上がって、紅茶を2杯淹れた。
リヴァイが座っているソファのとなりに腰かけて、彼の方に頭を預ける。


「わたしね、確かに王都自体にも憧れがあるけど…」


照れ臭い言葉を、振り絞った。


「リヴァイと同じ景色が見てみたかったの」

「………」


そしてわたしは、口にしてはいけない言葉を口にしてしまった。


「もしかしたらわたしが巨人を討伐したいのも、そんな甘っちょろい考えかも知れないな…」

「お前、何言って」

「両親の仇とか、救ってくれた団長の為とか、もうそんなのいいんだ…ただ、いつも怖いの。待ってるのが」


飲み負えた紅茶をテーブルの上に置く。


「ねぇリヴァイ。わたしより先に、いなくならないで」


言葉を紡いで、初めて自分の気持ちに気づいた気がした。
わたしは臆病なんだ。
リヴァイが壁外へ行くのを見送って、無事に帰ってくるかを祈って、そして安堵の涙をひっそりと流して。そんな毎日に、わたしはきっと疲れてしまったのだろう。

立体起動装置を使って壁外に行きたいのは、もしかしたら、リヴァイがいなくなる前に、自分が巨人の餌になってしまいたかったからなのかもしれない。

バカみたいな思考に嫌気がさす。

だけどリヴァイは、そんなわたしを優しく抱き締めてくれた。


「俺は絶対に、ナマエを置いていなくなったりしない」


バカなわたしを、こんなにも思ってくれる人がいる。
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