long/温かな光
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訓練兵の休憩時間がやってきた。
わたしの前を、わたしに敬礼しながら過ぎていく訓練兵たち。年齢はあまり変わらないのだけど…。
とりあえず、まず女の子のミカサから声を掛けようとする。その隣にエレンが一緒にいるので、一石二鳥だ。出身地が同じ二人(資料にて確認済)はやはり仲がいいようだ。
もう一人シガンシナ地区出身の少年がいたような。
「あ、あの…」
声を掛けると、ミカサがその黒髪を揺らしながら振り向いて敬礼する。
わたしも敬礼をして、
「どうしたらそんなに早く跳べるの?今までに、何か過酷な訓練や格闘技などは?色々教えてほしいんだけど…!」
緊張から勢いまかせに言葉を発すれば、二人はポカンとした様子でわたしを見つめている。
…ん、なぜそんな目でわたしを見るの?
「あ、あのさ…あんたも、調査兵団だろ?立体起動装置で跳んでるんだろ?」
不思議そうに訪ねるエレンの瞳の奥に、わたしは彼の調査兵団への憧れを見て、自分のエンブレムの意味を思い出した。
そしてシガンシナ地区出身の彼らへ、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
わたしは跳ばないのだ。
調査兵団にいながら、巨人を討伐しないのだ。
「わたしは…研究したり、雑務が主な仕事で…」
「え」
「壁の外へ出してもらった事がないんだ」
「…確か、ナマエって言ったよな」
エレンは先日のわたしの自己紹介を覚えてくれていたようだ。
「壁の外へ出ない調査兵団もいるのか?」
「あ、わたしみたいなのは滅多にいないよ」
「じゃあなんで出ないんだ?」
「…出して、もらえないと言うか」
そこへ、次の訓練の開始を告げる鐘が響いた。