long/温かな光
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「あ?なんだそりゃ」
「え、名前だよ、新しい訓練兵の」
「じゃなくて」
と、リヴァイは怪訝な顔をした。
わたしは「すごい子がいるんだよ!」と、その訓練兵の名を口にしただけだ。
それがお気に召さなかったのだろうか?
こんがりと焼けたパンを口にしながらモゴモゴとしゃべるわたしに、リヴァイは「汚ぇ」と一言。
そして、
「お前が誰かに興味を示すなんざ珍しいな。くだらねぇ」
と鼻で笑った。
「あ、それってヤキモチってやつ?」
「俺ぁこれから会議だが、今晩、覚えとけよ」
「冗談なのにー…」
と暫く沈黙が二人を包んで、その後、目が合ったリヴァイは不機嫌そうだった。
「ね、リヴァイ。本当にすごいの彼。見てきたら?」
「うるせぇ」
「変な意味じゃないんだよ」
「変な意味ってなんだ」
音も立てず食べ終えたスープの皿をパンの乗っていた皿に重ねて、リヴァイは無言で部屋を出ていった。
「しかも彼、調査兵団への入団を希望してるんだよー…」
と、その名をひとり呟く。
「エレン・イェーガー……」
彼の訓練を眺めていて、――人類最強と言われる男には失礼だが、彼がリヴァイの命を救う日が来るかもしれない、と、わたしの胸は高ぶったのだ。
それはあの日、エルヴィン団長の部屋の窓の外、立体起動装置の訓練をしていたリヴァイから目が離せなかった気持ちと少し似ているのかもしれない…そんな風にも思った。