long/温かな光

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扉をノックすると「入れ」と声が聞こえた。


「リヴァイ…」

「あ?」


彼は手にしていた本を机に置いて、じっとわたしを見た。


「何かあったか」

「…別に、何も」


わたしはリヴァイに頼ろうとしているんだろうか。
虫が良すぎる話だ。今まで彼を嫌っておきながら。


「あの」

「どうした」


リヴァイは真っ直ぐにわたしを見てくれた。
そのせいで、つ、と涙が零れた。


「ナマエ?」

「…わたしがここに来た時、鍛えて欲しいって、言ったでしょ」

「あぁ、言ってたな」

「わたしも、巨人を討伐する。どうしたらいいの」


巨人の事も立体起動装置の事も把握してる。だから大丈夫。
あとは、体力や技術の問題だ。


「お前には無理だ」

「どうしてそんな事言うの」

「見てればわかる」


じゃあわたしは、なんの為にここにいるの…
あの女兵士の言葉は間違っていない。
わたしは何の役にも立たない、無力な人間だ。


「例えば、だ」

「?」

「お前がいる事で、誰かが生きる光を見出だせたとしよう」

「………」


涙はとどまる事を知らない。


「…だから今のままで構わないんだ、ナマエ」

「リヴァイ…」


自分でも知らない間に体が動いて、彼の胸に顔を埋めていた。
リヴァイは優しく髪を撫でてくれた。
優しく、まるで…あの日のエルヴィン団長のように。


「ナマエ」

「…っな、に」

「お前を探していた。あの屋敷が巨人にやられたと聞いてからずっと。お前も死んだと思ってた。けどずっと、探してたんだ」


…この人は誰?
本当にリヴァイなの?
あの青年は、リヴァイなの?


「ナマエ、俺はお前を、やっと見つけたんだ」


温かな腕。優しい言葉。


「リヴァイ…?」

「もうどこにも行くな」
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