long/温かな光
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自分の心臓の音が聞こえる。
知らず知らずのうちに、足早になっていく。
早く会いたい。
団長に会いたい。
だけどいざ団長室の前に立つと、心臓が口から飛び出そうになるくらいバクバクと鳴り響いて、なかなかその扉をノック出来ずにいた。
深呼吸して、服と姿勢を正して。
コンコン
と、こんなに緊張するノックは初めてかも知れない。
「ナマエ・ミョウジです」
とその時、唐突に、それも相当の力で扉が開かれた。
ごちん!と音を立ててぶつけた額に手を当てながら瞳を開くと、立っていたのはリヴァイだった。
奥の机に、団長がにこやかに座っている。
「リヴァイ…なんで、ここに、」
「俺の台詞だナマエ。なぜここに来た。俺は俺の部屋に来いと言ったはずだ」
「え、っと、その、団長室に、忘れ物を…」
もちろん苦し紛れの嘘で、きっとリヴァイもそれを理解して、そして間違いなく怒っている。
眉間にシワを寄せて、まるで私は威嚇されているようだ。
「どうした、ナマエ」
部屋の奥から優しい団長の声が響いた。それだけで涙が溢れそうだった。
ほっとして顔が緩んでしまったのがわかった。
「エルヴィン構うな。ナマエは俺のだ」
「リヴァイ、ナマエは物ではないと言ったはずだ」
「じゃあ訂正しよう。ナマエは俺の女だ」
…リヴァイが言っている意味が全く理解できなかった。
私が、リヴァイの女?それは秘書的な…そういう意味なのだろうか。
「リヴァイ…!」
エルヴィン団長がガタン、と音を立てて立ち上がった。
「口出しするなエルヴィン。既にそういう事だ」
そういう事って…どういう事だろう。
エルヴィン団長が感情的になってくれた事になんだか嬉しさを覚えながら、私はリヴァイの言葉が全く理解できずにいた。
団長は何か知っているのだろうか。
驚いたような、悲しいような…寂しい表情をしていた。