long/温かな光

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たまたま廊下で出会ったリヴァイを、わたしは無視して通り過ぎた。

通り過ぎようとしていた。


「ナマエ」


だけど名前を呼ばれてまで無視する度胸はわたしには無かった。


「なに」

「悪かった」


聞き間違えかと思うほどの言葉に、わたしの時間は止まってしまった。


「それから、エルヴインから許可をもらった。今日から貴様は俺のものだ」

「…は?」


時間が動き出した。


「鍛え直してやる」

「鍛え直すって…わたしは立体起動装置も扱えないし、研究や事務処理の方が…」

「エルヴインの隣でか?」

「この間から、リヴァイは何か勘違いしてる。わたしと団長は…」

「嘘が下手だな」


確かにそうだ。現に今わたしの耳は真っ赤になっていて、それが自分でもわかる。


「…団長が、そんな事許可したなんて、有り得ない」

「ついさっきの話だ。団長室にいるだろうから聞いてこい。納得したら俺の部屋に来い」


嫌だ。

嫌だ嫌だ嫌だ。

嘘だ。

わたしは団長に鍛えてほしいと言ったの。
忙しいのはわかってる。それでもわたしは、団長に…


バタバタと音をたてて団長室に向かうわたしを、他の兵士たちはどんな目で見ていただろう。
だけどそんな事はどうでも良かった。

真実を知りたい。
なぜ団長は、わたしをリヴァイなんかに。

嘘だ。


コンコン


「誰だ」

「ナマエ・ミョウジです。入室の許可を…」

「入れ」


きっとわたしは泣きそうな顔をしている。
だって、エルヴイン団長も、同じだったから。


「団長…どういう事ですか。確かにわたしは鍛えてほしいと言いました。でも、」

「言いたい事はわかっている」

「わかってないです!わたしは団長に救われて希望を見いだせたから、今まで生きてこれたんです!あの日からわたしは、ずっと団長だけを…」

「ナマエ」


いつの間か流れていた涙を、彼は優しく拭ってくれる。


「今まで、悪かったと思っている。君は私を拒んだ事など一度もなかった」

「だって、わたしは…」

「私は、君を利用していたんだよ」

「嘘です」

「ナマエ」

「団長はそんな人じゃない。わたしは知ってる」


わたしはエルヴイン団長の手を握った。そのままソファーへ向かう。


「ナマエ!」

「団長、いつもみたいに…お願い。利用しててもいいから」


団長に捨てられる事が怖かった。
体を重ねている間は、わたしは間違いなく団長のもの。

もう一人にしないで。

どこにも行かないで。

ずっと傍にいて。



団長は優しく頭を撫でてくれた。
優しく口付けられで、わたしは、これが最後だとわかった。

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