long/温かな光

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不覚にも泣いてしまった。
その涙は、団長室に戻ってもやむ事を知らない。


「ナマエ、どうした!」


団長はすぐに席を立って駆け寄ってきてくれる。
わたしが持っていた書類は泥まみれで顔は凛としてるつもりがグシャグシャで。
あぁ、もうなんでわたしはすぐに団長に頼ってしまうんだろう。だからリヴァイにお花畑だとか言われてしまうんだ。

それでもそんな悔しさをバネに、


「わたしに、何か兵士としての技術を教えて下さい」


そう言い切った。


「ナマエ…?」

「悔しいです。わたし、何もできなくて、こんな……」


団長には大方察しがついたらしく、よしよし、と頭を撫でてくれた。


「わたし、強くなりたいんです。負けたくない。あいつ、なんにも知らないくせに…!」

「ナマエ、」

「巨人の事だって、きっと、なんにも……」





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忘れかけてた遠い記憶を思い出した。
厳しくも温かい母親と、たくましく優しい父親。

…なぜあの時、あの屋敷に巨人が現れたかは未だにわからない。
頭が真っ白になって、両親が巨人に捉えられるのを見た時、後方から馬の足音と金属が肉を削ぐ音が響いて、次の瞬間、わたしは馬上にいた。
振り替えると、巨人に喰われ零れた両親の肉の塊と、うなじを削がれ倒れている巨人の姿があった。

そうしてわたしの命を救ってくれたのが、エルヴィン団長だった。
当時まだ団長でなかった彼だが、わたしを拾い育て、妹のように扱ってくれた。

だからこの胸に、わたしは再び光を宿せたのだ。
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