long/温かな光

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それから数日間は、リヴァイの調査兵団入団に伴う書類やらなんやかんやで、彼に会う機会が増えていった。
彼は苦手だ。早くこの仕事には一段落つけたい。


コンコン、とリヴァイの部屋をノックすると、


「ナマエか」


と室内から返事が聞こえた。

…どうしてノックだけでわたしだとわかったのだろう。


「あ、はい、ナマエです…入室の許可をいただけますか?」

「好きにしろ」


好きにしろと言うくらいならどうぞと言えば可愛いものを、と思いながら、彼の部屋に入り書類を広げる。


「こことここに、サインを。あと、この書類にも」

「何から何まで面倒だな」

「重要な事ですので」


あぁ、苦手だ。どうして彼はいつもそう不機嫌なのだろう。


「…リヴァイさん」

「なんだ」

「えっと…どうして、ノックだけでわたしだと?」


なんとか空気を変えたい一心で尋ねれば、暫くの沈黙の後、


「右足、微妙に引きずってるだろ」

「え」


わたしの右足が怪我を負ったのは、5年も前の話だ。そして完治している。なんの違和感も不都合もない。
…それを彼は音で気付いたとでも言うのだろうか。

彼はわたしの広げた書類に一通り目を通して、すらすらと必要事項を記入していく。



「それと、ナマエ」

「はい」

「敬語はやめろ、気色悪ぃ。借りにも貴様の方がここじゃ先輩だしな」

「…じゃ、お言葉に……甘える」

「あと」

「まだ何か…」

「おまえ、エルヴィンとはどんな関係だ」

「―え、は、はい!?」


みるみるうちに顔が赤くなったのが、自分でもわかった。
エルヴィン団長は皆の憧れだ。
故に、彼の隣で彼の秘書的な業務も行っているわたしが他の女兵士に妬まれる事も少なくない。

とは言え、エルヴィン団長とわたしは…


「わ、わたしは、団長の秘書的な…雑務係です」

「それでそんなに顔が赤いのか」


なんて嫌な男だろう。


「えと、それから、わたしはエルヴィン団長に拾ってもらったと言うか、なんと言うか…妹、みたいな」

「はっ」


リヴァイはわたしの返答に鼻で笑って、


「どーせ、恋慕の感情でも抱いてるんだろうが」


苦虫を噛み潰すように、無神経な一言を吐き捨てた。
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