short/温かな光
□忘年会にて
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調査兵団の食堂で、忘年会が行われた。
くじ引きで席を決めたら、右にオルオがいる面倒臭い席になってしまった。左にエレンがいるのが救いだ。
あぁ、リヴァイが遠い。
エルヴィン団長が挨拶をして、兵士達の今年一年の勇姿を讃える。
そして賑やかになる食堂。
少しばかりお酒が入った団員は饒舌になる。万が一の事を考えて、お酒を飲む人間と量は定められている。
「なぁ、ナマエ!」
とオルオに話をふられたが、聞いていなかったので、適当に「そうなんですか」と笑っておいた。多分周りのみんなも空気は読めているはずだ。
ん、オルオは今日飲んじゃいけない兵士のはず。飲んでないのにこの饒舌さは…さすがオルオ!
エレンと他愛ない話をしながらチキンに手を伸ばせば、斜め前から伸びてきた手に消えるチキン。
………サシャめ。わたしの方が大先輩だと言うのに。
「ナマエ、こっちのチキンやるよ」
とエレンが気を利かせて他の皿からチキンを取ってくれた。
なんだか恥ずかしいようなありがたいような。
「ありがとう、でもわたしそんな食いしん坊じゃないから大丈夫だよ」
「こんな時に食っとかないと」
「兵士のみんなの方こそ。エレンちゃんと食べてる?」
「あぁ」
そう言えば、とミカサを探せば、リヴァイの隣にいた。
なんだかすごいツーショット。
あそこにもし巨人が現れたら、巨人が可哀想な気がする。
「俺は知っていたがな、なぁナマエ、この間もそうだったよな!」
「そうだねオルオ」
もう少ししたら、みんなワイワイ席を替わり出すのだろうか。
そしたらミカサと変わろう。エレンもミカサも喜ぶだろうし。わたしもリヴァイの隣に行ける。
「なぁナマエ、」
「ん、エレンなぁに?あ、この魚食べる?そっちのお皿のやつサシャが全部食べちゃったみたいだね」
「あぁ、ありがとナマエ。それでさ、この間ナマエがハンジさんと話してた巨人の…」
「まぁアレだな、経験者にしかわからねぇってやつだ、なぁナマエ」
「そうね、オルオ」
みんながちぐはぐな話をする。普段生きるか死ぬかの瀬戸際にある彼らにとっては、きっとそれも飲み会の楽しみだろう。
「はい、兵長。これお好きでしたよね」
ふとリヴァイに目を向けると、リヴァイの隣(ミカサと反対側)の席のペトラが、リヴァイの世話係のようになっていた。
リヴァイの皿に色々盛り付けたり、飲み物をついだり。
どうしてペトラはあんなに可愛くて優しくて気が利くのだろう。感心して眺めているわたしを他兵士達がじっと見ているのに気付いた。
「あーあのな、ナマエ」
「今度はなぁにオルオ」
「おまえにとっちゃ複雑な気持ちかもしれんがな、俺にはわかる」
「…何がわかるのかわからないけど、もうわかったから」
「???」
恐らくみんなはわたしがペトラに嫉妬していると思っているのだろうか。
わたしはペトラには(もう)嫉妬はしない。だってペトラを見ている限り、ペトラはリヴァイに尊敬の念を抱いて、リヴァイの力になろうとしてくれている。リヴァイも部下としてペトラを信用しているし、わたしはそんな二人に嫉妬する理由がないのだ。
…よ、余裕と言われれば、そうかも知れない…。
辺りがワイワイ騒ぎ出して、わたしはミカサに近付いた。「エレンが呼んでるよ」なんて嘘も方便。今のわたし、ちょっとお姉さん気取りだったりなんかして。
「おい」
やっとリヴァイの隣に座れた。(そしてオルオから解放された)
周りの兵士達がニヤニヤしながら見ているが、わたしとリヴァイの関係を知らない者がいないこの場所で、今更周りの目は気にならない。
「てめぇ…エレンの野郎とチキンやら魚やらでいちゃつきやがって」
リヴァイは小さくそう言った。
うーん、ご機嫌斜めだ。だけどちゃんとわたしを見ててくれたんだなーと思うと、ちょっとドキリとした。
「あ、ナマエ。ナマエが来たなら、わたしはエルドのところに行こうかな」
「ペトラは気が利くね。わたしも見習わなくちゃ。でもペトラみたいにはうまくできないなぁ」
「ナマエ、俺の話を聞け」
「あ、兵長ったらエレンとオルオに嫉妬ですか?やぁだー」
と言うペトラは、多少酔っているようだった。
「兵長ったら両手に花ですね」「あの二人ライバルかなぁ」「ペトラはオルオと仲がいいんじゃねぇか?」等と色んな声が聞こえて、ペトラはそそくさとエルドの所へ行ってしまった。
「まだペトラと話したかったんだけどな」
「てめぇは俺じゃなくてペトラの傍に来たのか」
「リヴァイ、今日は飲んでないはずなのに、酔ってるみたい」
ふふ、と笑えば、リヴァイの顔はほんのりと赤く染まった。
「調子に乗ってると今晩鳴かすぞ」
「あら楽しみ」
「……酔ってるんじゃねぇだろうな」
「素面ですー」
そう言ったわたしの手をそっと握って、彼は私を食堂から連れ出して部屋へと向かう。
「ちょっと、まだお開きは…」
「他の奴らとイチャついてるてめぇにイラついてんだ」
言葉はキツいが、声の調子は優しかった。
「ちょっと離れたら…寂しかった?」
「…バカ言え」
「わたしは寂しかったよ。オルオの話もよくわかんなかったし。でもオルオにはもーちょっと優しくしてあげないとダメだな。彼は強いし、リヴァイを守ってくれるかも」
「てめぇはエレンだけじゃなくオルオにまで色目を使うのか」
リヴァイがちょっと可愛いなと思えたのは、ここだけの話…。
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「ハンジ、相変わらず仲がいいと思わないか、リヴァイとナマエは」
「ねぇねぇエルヴィン、私あの二人見てると邪魔しちゃくなっちゃうんだよねーまぁ応援と言う名のお邪魔なんだけどさ」
「はは、わかるような気もするよ」
「そう言うエルヴィンが、リヴァイに嫉妬してる事も私はわかってるよ」
「…君は本当に勘がいいな」
来年も、みんな仲良く無事に、過ごせますように。
よいお年を…★