long/温かな光
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ふと窓の外に目を見やると、立体起動装置の訓練をしている男がいた。
リヴァイだ。
その動きに、思わず見とれてしまった。
動きがとても軽やかで、とてつもなく速くて、全ての筋肉がしなやかで…
ガスの節約も怠ってはいない。剣のさばきも素晴らしい。無駄がまったくない。
「リヴァイと仲良くなれそうか」
後ろにエルヴィン団長がいた事にも気付かなかった。
「あ、あの小ささが、武器になるかもしれませんね」
リヴァイに見とれていた自分を肯定したくなくて、わたしは悪態をついて書類整理に戻った。
「わたしとあまり、身長、変わりませんし…」
それを見て、団長がくすりと笑う。
「ナマエ、彼を兵士長にしようと思っている」
「……へ?」
変な声が出てしまったが、無理もない。
「だってまだ、彼はここに来て…」
「確かに調査兵団に入って間もないが、ナマエもあの動きを見ただろう。ふさわしいとは思わないか」
「…みんなとやっていけるんですか?チームプレーが出来なくちゃ、一人で巨人は倒せません」
「その通りだ。だがそれも心配ない。彼は彼なりに、他の兵士とうまくやっているよ」
わたしがこの部屋で雑務処理に追われいる間に、どうやらリヴァイは他兵士とうまく信頼関係を築いているらしい。
「そうなんですね」
なんだか悔しい。彼に悪態をついているのがわたしだけだったなんて、あまりに愚かで恥ずかしい。
「ま、人間と人間だからね。うまくいかない事だってあるだろう」
団長にぽんぽんと頭を撫でられて、またもわたしの気持ちはリセットされる。
「リヴァイは、自分が兵長になる事を知ってるんですか?」
「ああ、了承してくれたよ」
「じゃ、彼が休憩に入ったら、少し話してきます。兵長の書類にもサインしてもらわないと」
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リヴァイは木陰で立体起動装置の整備をしていた。
「なんだ」
睨むように見据えられて、胸の奥がチクリと痛む。
「兵長になるって聞いたから」
リヴァイの傍に腰かける。
彼はわたしの持っていた書類をちらりと見ると、
「お前が適当にサインしといてくれ」
と言った。もちろんそんな事は許されない。
「リヴァイのサインが必要なの」
「いちいち面倒な女だな」
「別にわたしの意思じゃない。決まりだから。…リヴァイ、他の兵士にはそんな事言わないんでしょ」
「あぁ?」
「他の兵士とはうまくいってるんでしょ。どうしてわたしにだけそんな冷たく当たるの」
これがどんな感情なのかは知らないけれど、とにかく悔しかったのだ。
涙が出そうになるのを必死にこらえるわたしを、リヴァイは鼻で笑う。
「おまえの頭の中がお花畑だからだよ」
「!!?」
「憧れてる男の傍でヘラヘラと呑気に過ごしやがって」
「な…!」
「税金食って危険とかけ離れながらエルヴィンに護られて…、気に食わねぇんだよ」
「き、巨人に立ち向かう事だけが、大事な事じゃない…!」
強がりなつもりなんかじゃなかった。
だけどきっと強がりだったんだ。
わたしの胸ぐらはリヴァイに捕まれて、書類があちこちに散乱して、
「だったらおまえには何ができる?」
今までにない程の悔しさで、涙が一気に溢れた。